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創業計画書の書き方:日本政策金融公庫の様式を項目ごとに解説

日本政策金融公庫(公庫)の創業計画書は、10の欄が数字でつながった一枚の書類として作ると、面談で説明しやすくなります。「取扱商品・サービス」の単価、「取引先」の回収条件、「必要な資金と調達方法」の合計、「事業の見通し」の利益が互いに矛盾しないことを確認してから提出するのが基本です。

融資制度の内容や申込の流れは創業融資の基本:日本政策金融公庫の制度を中心にで解説しています。この記事では、様式そのものの書き方に絞ります。

様式の入手と位置づけ

創業計画書は、公庫の「各種書式ダウンロード(国民生活事業)」のページから、Excel版とPDF版を入手できます。同じページに、洋風居酒屋、美容業、中古自動車販売業、婦人服・子供服小売業、ソフトウェア開発業、内装工事業、学習塾、歯科診療所、介護サービスの業種別記入例と、「売上高等の計算方法について」「創業計画書セルフチェックリスト」が掲載されています。月別の詳細な収支計画を作るための「月別収支計画書」とその記入例もあります。

様式の冒頭には、この書類は面談にかかる時間を短縮するために使うこと、可能な範囲で記入して借入申込書に添えて提出すること、この書類に代えて自分で作成した計画書を提出してもよいことが書かれています。つまり創業計画書は、面談で話す内容の下書きの役割を持つ書類です。空欄を埋めることより、面談で聞かれたときに根拠を説明できる内容にすることが大切です。

各欄の書き方

1 創業の動機

「どのような目的、動機から創業するのか」を書く欄です。セルフチェックリストでは、創業への熱意や、創業を志すまでの経緯を記載しているかが確認項目になっています。「独立したかった」だけで終わらせず、これまでの仕事で見てきた顧客の課題や、事業の見通しが立ったきっかけ(受注の見込みなど)を具体的に書きます。

2 経営者の略歴等

様式には、勤務先名だけでなく、担当業務や役職、身につけた技能なども書くよう注記があります。過去の事業経験の有無、取得資格、許認可、知的財産権の欄もあります。これから始める事業に関係する経験を中心に、年月と内容を時系列で書き、実績があれば数字で示します。許認可が必要な業種では、申請中か取得済みかを明記します。

3 取扱商品・サービス

事業内容、商品・サービスごとの売上シェア、客単価または受注単価、営業日数や営業時間、セールスポイント、販売ターゲット・販売戦略、競合・市場について書きます。セルフチェックリストでは「誰に、何を、いくらで販売するか」「販売ターゲットに合った販売戦略」「競合他社や市場について調べているか」が確認項目です。

ここに書いた単価は、後の「事業の見通し」の売上計算にそのまま使われます。単価に幅がある場合は、見通しの計算でどの値を使ったかが分かるようにしておきます。

4 従業員

常勤役員の人数(法人のみ)、従業員数(3か月以上継続して雇用する予定の人)、そのうち家族従業員とパート従業員の人数を書きます。ここの人数は「事業の見通し」の人件費と対応している必要があります。

5 取引先・取引関係等

販売先、仕入先、外注先ごとに、取引先名、シェア、掛取引の割合、締め日と回収日・支払日を書きます。人件費の支払日とボーナスの支給月を書く欄もあります。セルフチェックリストでは、入金や支払いのタイミングなど取引形態を記載しているかが確認項目です。

この欄は運転資金の計算の根拠になります。たとえば「月末締め・翌月末回収」の販売先が中心なら、売上が現金になるまで1か月以上かかり、その間の仕入や人件費を手元資金で払う必要があります。記入例では、元勤務先からの受注が決まっていること、販売先・仕入先との結びつきがあれば記入することが示されています。

6 関連企業・7 お借入の状況

申込人、法人代表者、配偶者が経営している企業があれば記入します。お借入の状況には、事業用だけでなく住宅、車、教育、カードローンなども含めて、借入先、残高、年間返済額を書きます。個人の借入の返済も、事業の利益から生活費とあわせて払っていくことになるため、漏れなく書きます。

8 必要な資金と調達方法

左側に必要な資金(設備資金と運転資金)、右側に調達方法(自己資金、親族・知人からの借入、公庫からの借入、他の金融機関からの借入)を書きます。記入例では、左右の合計金額が一致すること、設備資金には見積書を添付し、支払済みのものは領収書や請求書を添付することが示されています。

セルフチェックリストでは次の点が確認項目です。

  • 見積金額が適切か、相場を調べたり相見積もりを取ったりして検証しているか
  • 事業開始後の運転資金について検討しているか
  • 自己資金が少なく、借入に頼った資金調達計画になっていないか

9 事業の見通し(月平均)

「創業当初」と「1年後または軌道に乗った後」の2時点について、売上高、売上原価(仕入高)、経費(人件費、家賃、支払利息、その他)、利益を月平均で書き、右側に計算の根拠を記入します。記入例では、利益の欄に「所得税等の税金や借入金の返済元金はここから支払われる」「個人営業の場合、事業主分の人件費はここに含まれる」と注記されています。

売上の計算方法は、公庫の「売上高等の計算方法について」に業種別の考え方が示されています。

  • 設備が売上に直結する業種:設備の生産能力 × 設備数
  • 店舗売りの比重が大きい販売業:1㎡(または1坪)当たりの売上高 × 売場面積
  • 飲食店、理容・美容などのサービス業:客単価 × 席数などの設備単位数 × 回転数
  • 労働集約的な業種:従業者1人当たり売上高 × 従業者数

同じ資料では、支払利息は「借入金残高 × 年利 ÷ 12か月」で月額を計算し、売上原価は一般に「売上高 × 原価率」で求めること、個人営業の場合は人件費に事業主分を含めない(家族の分は含める)ことが説明されています。1㎡当たりや従業者1人当たりの売上高は、日本政策金融公庫総合研究所編の「小企業の経営指標」などで調べられると案内されています。業種に合った方法を選び、別の方法でも検算しておくと、面談で根拠を聞かれたときに答えやすくなります。

10 自由記述欄

アピールポイント、事業を行ううえでの悩み、希望するアドバイスなどを書く欄です。様式の末尾には、経験や事業内容の詳細が分かる計画書などの参考資料があれば併せて提出するよう書かれています。

欄どうしで矛盾が出やすい箇所

提出前に、次の対応関係を確認します。

確認する組み合わせ 確認すること
3の単価・営業日数 と 9の売上高 見通しの売上が、3に書いた単価と日数から計算できるか
4の人数 と 9の人件費 人数と一人当たりの給与から人件費が説明できるか
5の回収・支払条件 と 8の運転資金 入金までの期間の支払いを、運転資金でまかなえるか
7・8の借入 と 9の支払利息 借入額と利率から月の支払利息を計算しているか
8の左右の合計 必要な資金と調達方法の合計が一致しているか
9の利益 と 返済 利益から借入の元金返済と生活費(個人の場合)を払えるか

セルフチェックリストの「利益から借入の返済が可能な収支計画となっていますか」という項目は、この表の最後の行に当たります。

スタートアップ型の事業で書くときの注意

開発期間が長く、売上が立つまでに時間がかかる事業では、次の点を意識します。

  • 売上が立つまでの期間を運転資金に反映する:ソフトウェア開発業の記入例では、システム開発に最短でも3か月かかるため、つなぎの運転資金が必要であることを資金の内訳に書いています。開発期間中の人件費や外注費を、必要な資金に含めておきます。
  • 「創業当初」の数字を無理に黒字にしない:実態と違う数字を書くと、面談での説明と食い違います。赤字の期間がある場合は、月別収支計画書を使って、いつ黒字になるかと、それまでの資金をどう確保するかを示すほうが説明しやすくなります。
  • 出資による調達を予定している場合は分けて書く:投資家からの出資を見込む場合、その時期と確度を分けて説明します。確定していない出資を前提に資金計画を組むと、返済計画の信頼性が下がります。

投資家向けの事業計画書やピッチ資料は、成長の大きさを伝える書類であり、創業計画書とは読み手の関心が違います。両方を作る場合も、数字の前提はそろえておきます。投資家向け資料の組み立て方は投資家に読まれる事業計画書・ピッチ資料の組み立て方を参照してください。

作成と相談の進め方

  1. 様式をダウンロードし、自分の業種に近い記入例を読む
  2. 3と5(商品・サービスと取引条件)を先に固め、そこから9の見通しと8の必要資金を計算する
  3. セルフチェックリストで抜けを確認する
  4. 必要に応じて公庫の支店の相談窓口を予約し、書類を見てもらう

制度は改定されます。申請・契約の前に公式情報と専門家(税理士など)に確認してください。

参考資料

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