創業融資の基本:日本政策金融公庫の制度を中心に
創業期の融資でまず検討したいのが、日本政策金融公庫(国民生活事業)の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方が対象で、融資限度額は7,200万円、創業期は原則として無担保・無保証人で利用できると案内されています。ただし審査では事業計画と返済の見通しが確認されるため、創業計画書の準備が結果を左右します。以下は2026年9月時点で公庫の公式ページを確認した内容です。
創業融資とは
創業融資は、これから事業を始める人や、事業を始めて間もない人向けの融資です。創業期は営業実績が乏しいなどの理由で資金調達が難しいことが多いため、日本政策金融公庫の国民生活事業では、創業融資を通じて創業・スタートアップを重点的に支援するとしています。
融資は出資と違い、株式を手放さずに資金を得られる一方、利息を含めて返済する義務があります。資金調達手段の全体像は新規事業のお金の集め方:社内予算・補助金・融資・出資の違いで比較しています。
新規開業・スタートアップ支援資金の概要
| 項目 | 内容(公式ページの記載) |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 資金のお使いみち | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金10年以内(うち据置期間5年以内) |
| 利率 | 基準利率。要件に該当する場合は特別利率 |
| 担保・保証人 | 希望を聞きながら相談 |
対象者には、「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」という条件が付いており、創業計画書の提出などで事業計画の内容が確認されます。
特別利率が適用される主な例
公式ページでは、次のような方が必要とする資金(原則として土地にかかる資金を除く)に特別利率が適用されると記載されています(一部を抜粋)。
- 女性の方、35歳未満または55歳以上の方
- 認定特定創業支援等事業(創業塾や創業セミナーなど)を受け、認定市区町村が発行する証明書を取得した方
- 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している(予定を含む)方で、自ら事業計画書を策定し、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けている方
- Uターン等により地方で新たに事業を始める方
- 日本ベンチャーキャピタル協会の会員等から出資を受けている(見込みを含む)方
- 技術・ノウハウ等に新規性がみられる方
具体的な利率の水準は時期によって変わるため、公庫の金利ページで最新の値を確認してください。
あわせて使える特例制度
創業支援貸付利率特例制度
新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象で、各種融資制度に定める利率から0.65%引き下げられます。雇用の拡大を図る場合は0.9%の引下げです。一部利用できない融資制度があるとされています。
経営者保証免除特例制度
「経営者保証に関するガイドライン」に対応する制度で、要件を満たす法人は経営者の保証が免除されます。上乗せ利率はないとされています。対象の1つが「新たに事業を始める方または税務申告を2期終えていない方」で、法人と代表者の一体性の解消が一定程度図られていること(事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付金等がないこと)が公庫で確認できることが条件です。
また公庫の創業融資の案内ページでは、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できるとしています。
申込から融資までの流れ
国民生活事業の一般的な流れは次のとおりです。
- 相談:電話、支店窓口、オンライン(予約制)で相談できます。商工会議所や商工会などでも相談を受け付けています
- 申込:インターネット申込で、必要書類の電子データをアップロードします
- 面談:資金の使い道や事業の計画について聞かれます。店舗や工場を訪ねられることもあります
- 融資:融資の決定後、契約手続きを経て、指定口座に送金されます
- 返済:原則として月賦払いです
審査の結果、希望に沿えない場合があることも明記されています。
主な必要書類(創業する法人の場合)
- 創業計画書(これから事業を始める場合、または事業を始めて間もない場合)
- 確定申告書・決算書(税務申告が済んでいる場合。未了なら不要)
- 試算表(事業を始めたばかりで決算を終えていない場合など)
- 見積書(設備資金を申し込む場合)
- 法人の履歴事項全部証明書(最近6か月以内のもの)
- 代表者の本人確認書類
- 許認可証等(許可・届出等が必要な事業の場合)
このほか、電子契約サービスの利用申込書や送金先口座の情報が必要です。個人事業主として創業する場合は書類が一部異なります。
創業計画書の書き方
公庫の創業計画書の様式には、主に次の項目があります。
- 創業の動機
- 経営者の略歴等(勤務先名だけでなく、担当業務や役職、身につけた技能も書くよう指示があります)
- 取扱商品・サービス(セールスポイント、販売ターゲット・販売戦略、競合・市場など)
- 従業員
- 取引先・取引関係等(販売先・仕入先・外注先と回収・支払の条件)
- 関連企業
- お借入の状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し(創業当初と軌道に乗った後の売上高・原価・経費と、その計算根拠)
様式には、この書類に代えて自分で作成した計画書を提出してもよいと記載されています。業種別の記入例も公庫のサイトで公開されています。
審査で説明できるようにしておきたい点
- 経験との結びつき:これから始める事業に、これまでの経験や技能がどう活きるか
- 売上の根拠:客単価や受注単価、客数や件数、営業日数などを積み上げた計算になっているか
- 資金の使い道と調達の釣り合い:必要な資金の合計と、自己資金・借入などの調達の合計が一致しているか。設備資金は見積書と対応しているか
- 自己資金の準備:自己資金の額と、それをどのように準備してきたかを説明できるか
- 返済の見通し:事業の見通しの利益から、返済に回せる額があるか
売上の見通しは、楽観的な数字を置くより、根拠のある控えめな数字を示すほうが面談で説明しやすくなります。事業計画書全般の考え方は新規事業の事業計画書に書くことも参考にしてください。
申し込むタイミング
法人で申し込む場合は、履歴事項全部証明書が必要書類に含まれるため、会社の設立登記をどの時点で済ませるかも含めて計画します。設立の手順は株式会社設立の手順と必要書類(発起設立の場合)で解説しています。開業日や設備の支払日が決まっている場合は、相談・申込・面談・契約に必要な期間を見込んで、早めに相談を始めるのが安全です。
起業家が押さえておきたい注意点
- 融資は返済が前提です。出資で調達する予定がある場合も、返済計画との両立を確認しておきます
- 補助金の採択を見込んで資金計画を立てる場合、補助金は後払いであることが多いため、支払いから入金までの資金を融資や自己資金でどうつなぐかを考えておきます
- 公庫以外にも、民間金融機関の融資と信用保証協会の保証を組み合わせる方法などがあります。条件は制度や地域によって異なるため、各機関の公式情報を確認してください
制度は改定されます。申請・契約の前に公式情報と専門家(税理士など該当するもの)に確認してください。
参考資料
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