株式会社設立の手順と必要書類(発起設立の場合)
株式会社の設立は、「定款の作成と公証人の認証」「出資の払込み」「設立時取締役などの選任と調査」「法務局への設立登記の申請」という順で進み、登記によって会社が成立します。ここでは、起業家が最も多く使う発起設立(発起人だけが出資する方法)を前提に、手順と必要書類、法定費用、設立後の届出を整理します。
発起設立と募集設立
株式会社の設立方法には、発起人が設立時に発行する株式のすべてを引き受ける「発起設立」と、発起人以外からも株式の引受人を募る「募集設立」があります。法務局の申請書様式も、取締役会を置くかどうかと、発起設立か募集設立かの組み合わせで4種類に分かれています。本記事では発起設立を扱います。
設立の全体の流れ
法務省の案内では、発起設立の手続は次の5段階で示されています。
- 定款の作成と認証
- 出資の履行
- 設立時役員等の選任(機関の設置)
- 設立登記の申請
- 会社の成立
以下、段階ごとに見ていきます。
1. 定款を作成し、公証人の認証を受ける
事前に決めておくこと
定款を作る前に、商号(会社名)、本店所在地、事業目的、資本金の額、発起人と出資額、役員構成、事業年度などを決めておきます。
- 商号と本店:同じ商号で同じ本店所在場所の会社がすでにある場合は設立登記ができないため、法務局の記載例では、定款の認証を受ける前に確認するよう注意書きがあります
- 事業目的:法務局の記載例では、許認可が必要な事業の場合は、目的の書き方に問題がないかを事前に許認可を所管する官公庁に確認するよう案内しています
- 取締役会:取締役会を置く会社は、設立時取締役が3人以上必要です
- 資本金:日本公証人連合会の案内では、設立時の出資額の規制はなく、資本金1円でも株式会社の設立が可能とされています。実際には、取引先や金融機関からの見え方、当面の運転資金を考えて決めることになります
定款の記載事項
定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」として、目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称および住所があります。このほか、現物出資など定款に書かないと効力が生じない「相対的記載事項」、会社が任意に定める「任意的記載事項」があります。法務局の申請書記載例に定款のひな形が掲載されているので、参考にできます。
公証人の認証
株式会社の定款は、本店所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人の認証を受ける必要があります。管轄外の公証人による認証は無効になるとされています。なお、合同会社などの持分会社の定款は認証が不要です。
紙の定款で認証を受ける場合は、定款の原本を公証人に提出し、発起人の印鑑登録証明書(発行後3か月以内)などを用意します。電子定款(PDFに電子署名したもの)で認証を受けることもできます。
2. 出資を払い込む
発起人は、定款で定めた株式を引き受け、出資金を払い込みます。金銭出資の場合、払込みは銀行等で行います。定款で発起人の割当株式数や払込金額を定めていない場合は、発起人全員の同意でこれらを決め、その同意書を登記の添付書類にします。
金銭以外の財産で出資する現物出資などを定款に定めた場合は、原則として裁判所に検査役の選任を申し立て、調査を受ける必要があります。法務省の案内では、定款に記載された現物出資財産等の価額の総額が500万円を超えない場合や、弁護士・公認会計士・税理士等の証明を受けた場合などは、検査役の調査は不要とされています。
3. 設立時役員を選任し、調査を行う
出資の払込みが終わったら、設立時取締役(監査役を置く場合は設立時監査役も)を選任し、設立時代表取締役を選定します。設立時取締役は、出資の履行が完了していることや、設立の手続が法令・定款に違反していないことなどを調査します。
4. 法務局に設立登記を申請する
申請期限と申請先
設立登記は、設立時取締役等の調査が終了した日または発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局に申請します。申請方法は、書面(窓口への持参・郵送)とオンラインがあります。
主な添付書類(取締役会を置かない会社の発起設立の場合)
法務局の申請書記載例では、次の書類が挙げられています(会社の状況によって必要なものが変わります)。
- 定款(公証人の認証を受けたもの)
- 発起人の同意書(割当株式数や資本金の額などを定款で定めていない場合)
- 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
- 設立時取締役(および設立時監査役)の就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑証明書
- 本人確認証明書(設立時監査役を選任した場合など)
- 払込みを証する書面(払込金受入証明書、または設立時代表取締役が作成した証明書に預金通帳の写しなどを合わせたもの)
- 資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書
- 委任状(代理人に申請を委任した場合)
書面で申請し、代表取締役が申請書に押印する場合は、あらかじめ印鑑届書で登記所に印鑑を提出しておく必要があります。
完全オンライン申請の「24時間以内処理」
法務省によると、役員等が5人以内で、添付書面をすべて電子署名付きのPDFで送信し、登録免許税を電子納付するなどの条件を満たす完全オンライン申請は、24時間以内に処理する取り組みの対象になります(補正がある場合は対象外)。
5. 会社の成立
株式会社は、本店の所在地で設立の登記をすることによって成立します。設立後は、代表者の電子証明書や印鑑カードの発行を請求できるようになります。
設立にかかる法定費用
| 費用 | 金額 |
|---|---|
| 定款認証手数料 | 資本金の額等が100万円未満:3万円、100万円以上300万円未満:4万円、それ以外:5万円 |
| 定款認証手数料の軽減 | 資本金100万円未満で、発起人全員が自然人で3人以下、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の定款の定めがあり、取締役会を置かない場合:1万5,000円(令和6年12月1日施行) |
| 定款の謄本手数料 | 1枚につき250円 |
| 収入印紙(紙の定款の場合) | 4万円(電子定款の場合は不要) |
| 登録免許税 | 資本金の額の1000分の7。15万円に満たない場合は15万円 |
このほか、代表者印の作成費用や印鑑証明書の取得費用がかかります。司法書士などに手続きを依頼する場合は、その報酬も必要です。
設立後に必要な主な届出
登記が終わったら、税務と社会保険の届出を進めます。
- 税務署:法人設立届出書を、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に提出します。青色申告の承認申請書は、設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日までが期限です。このほか源泉所得税や消費税に関する届出があります
- 年金事務所:法人の事業所は、事業主のみの場合を含めて健康保険・厚生年金保険の加入が義務づけられています。新規適用届は事実発生から5日以内に提出し、法人登記簿謄本(提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの)を添付します
法務省の案内では、法人設立に関する複数の手続をオンラインでまとめて行える「法人設立ワンストップサービス」も紹介されています。
起業家が設立前に考えておきたいこと
手続きそのものより後から変えにくいのが、株主構成と役員構成です。共同創業者と株式をどう分けるか、辞めた場合に株式をどう扱うかは、設立前に話し合っておくことをおすすめします。詳しくは共同創業者の探し方と、組む前に決めておくことで解説しています。
また、設立直後に融資を受ける予定がある場合は、資本金の額や自己資金の準備状況が審査で見られます。創業融資の基本:日本政策金融公庫の制度を中心にもあわせて確認してください。
制度は改定されます。申請・契約の前に公式情報と専門家(司法書士・税理士・社労士など該当するもの)に確認してください。
参考資料
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