予算確保・資金調達

新規事業のお金の集め方:社内予算・補助金・融資・出資の違い

新規事業の資金の集め方は、大きく「社内予算」「補助金」「融資」「出資」の4つです。どれが良いかではなく、返済義務の有無、お金が入るタイミング、出し手が求める説明がそれぞれ違うため、事業の段階と使い道に合わせて組み合わせるのが基本です。

4つの資金源の違い

資金源 返済義務 お金が入る時期 出し手が主に見る点
社内予算 なし(ただし成果責任はある) 承認後、予算期間に沿って 既存事業との関係、投資対効果、撤退条件
補助金 原則なし(要件未達時の返還条件がある制度もある) 原則として事業実施・報告の後(後払い) 制度の目的・要件に合っているか、計画の妥当性
融資 あり(利息を含めて返済) 審査・契約後 返済できるか(収支計画、自己資金、経営者の経験)
出資 なし(その代わり株式を渡す) 契約・払込後 会社がどこまで大きくなるか、チームが実現できるか

以下、それぞれの特徴と注意点を見ていきます。

社内予算

大企業の新規事業では、最初の資金源はほぼ社内予算です。返済義務はありませんが、社内での説明責任は重く、稟議や審議会で投資判断を受けます。

社内予算で注意したいのは、予算が年度単位で決まることが多く、新規事業の検証サイクルと合わない点です。検証の結果を見て追加投資か撤退かを判断したいのに、次の予算編成まで待たなければならない、ということが起こります。これを避けるために、段階ごとに判断基準と予算枠を決めておく「ステージゲート」の仕組みを取り入れる企業もあります。稟議資料の書き方は新規事業の稟議で経営陣が見る点と資料の構成で解説しています。

補助金

国や自治体、公的機関が政策目的に沿った事業の費用の一部を補助する制度です。返済の必要がない点が大きな利点ですが、次の性質を理解しておく必要があります。

後払いが原則

多くの補助金は、採択されてもすぐにお金が入るわけではありません。例えば中小企業基盤整備機構が実施する「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の公募要領では、採択後に交付申請・交付決定を経て補助事業を実施し、実績報告と確定検査を受けてから補助金の請求・支払に進む流れが示されています。つまり、いったん自社で全額を支払う資金が必要です。補助金を当てにした資金繰りを組む場合は、つなぎの資金をどう用意するかを先に考えておきます。

交付決定前の発注は対象外になることが多い

同じ公募要領では、交付決定日より前に契約(発注を含む)した経費は補助対象にならないと明記されています。採択を待つ間に先行して発注してしまうと、その経費は補助されません。スケジュールは「交付決定後に発注する」前提で組み立てます。

制度ごとに対象者と要件が違う

補助金には、対象者(中小企業等に限る、など)、対象経費、賃上げなどの要件、公募期間が細かく定められています。大企業本体は対象外で、大企業の子会社も株式の保有割合などによっては対象外とされる制度があります。申請前に必ず最新の公募要領を読んでください。

個別の制度は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の要点(第1回公募)などで解説しています。

融資

金融機関からお金を借りる方法です。返済義務と利息がありますが、株式を手放さずに資金を得られます。

創業期の事業者向けには、日本政策金融公庫(国民生活事業)が「新規開業・スタートアップ支援資金」を用意しており、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が対象で、融資限度額は7,200万円とされています(2026年9月時点の公式ページの記載)。また公庫は、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できると案内しています。制度の詳細は創業融資の基本:日本政策金融公庫の制度を中心にを参照してください。

融資の審査で見られるのは「返せるかどうか」です。売上の見通しの根拠、自己資金の準備状況、その事業に関連する経験などを、計画書で具体的に説明できるようにしておきます。

出資

投資家に株式を渡して資金を得る方法です。返済義務はありませんが、会社の所有権の一部を渡すことになり、経営への関与や将来の売却・上場への期待を受け入れることになります。

出資が向いているのは、短期間で大きく成長することを目指し、そのために先行投資が必要な事業です。逆に、着実に利益を積み上げる事業や、創業者が経営の自由度を重視する場合は、出資以外の手段を中心にするほうが合うこともあります。

出資を受ける場合は、株式の比率や契約条件が将来の資金調達や経営判断に長く影響します。契約書の内容は必ず専門家(弁護士など)と確認してください。

大企業の新規事業担当者の場合

  • 社内予算が中心になります。資金をどう確保するかより、「どの条件を満たせば次の予算が出るのか」を経営陣と事前に合意しておくことが重要です。
  • 補助金は、大企業本体では対象外となる制度が多い点に注意が必要です。子会社や合弁会社で申請する場合も、株主構成によって対象外となることがあります。
  • 社外の資金(外部投資家からの出資など)を入れる場合は、出島型の子会社を作る、カーブアウトするなど、組織形態の検討とセットになります。

起業家・スタートアップの場合

  • 創業期は自己資金に加えて、融資と出資のどちらを軸にするかを最初に考えます。事業の成長スピードと、株式を渡すことへの考え方で選び方が変わります。
  • 補助金は後払いが多いため、手元資金が少ない創業直後は、補助金だけに頼る資金計画は組みにくいです。融資や自己資金と組み合わせる前提で検討します。
  • 補助金によっては、従業員がいない事業者や創業から間もない事業者が対象外とされる枠もあります。応募を考えている制度の要件を早めに確認してください。

準備にかかる時間を見込む

資金源ごとに、お金が入るまでの時間も違います。

  • 社内予算は、予算編成の時期と決裁のルートに左右されます。年度途中の追加予算は通しにくい会社も多いため、次の編成時期から逆算して準備を始めます。
  • 補助金は、公募期間が決まっており、締切を過ぎると次の公募回を待つことになります。申請に必要なアカウントの取得や、要件を満たすための社内手続きに日数がかかる制度もあるため、公募開始前から要領を確認しておくと安心です。
  • 融資は、相談から申込、面談、審査を経て実行されます。開業日や設備の支払日が決まっているなら、そこから余裕を持って動き始めます。
  • 出資は、投資家との面談を重ね、条件交渉と契約を経て払込みに至るため、ほかの手段より長くかかることが一般的です。資金が尽きる時期から逆算して、早めに動き出す必要があります。

組み合わせ方の考え方

どの資金源を使うかは、「何に使うお金か」から逆算すると決めやすくなります。

  • 設備投資など金額と用途がはっきりしている支出は、融資や補助金と相性が良い
  • 検証段階の人件費や開発費など、成果が不確実な支出は、社内予算や出資でまかなうことが多い
  • 補助金を使う場合は、支払いから入金までの期間をつなぐ資金(自己資金や融資)を用意する

資金源ごとに求められる書類や説明も違います。同じ事業計画をもとにしつつ、読み手に合わせて強調点を変えた資料を用意しておくと、手続きが進めやすくなります。

制度は改定されます。申請・契約の前に公式情報と専門家(税理士・弁護士など該当するもの)に確認してください。

参考資料

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