予算確保・資金調達

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の要点(第1回公募)

「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、中小企業等の新製品・新サービス開発、新市場への進出、輸出体制の強化を支援する補助金で、2026年9月時点では第1回公募の公募期間中です(電子申請の受付開始は令和8年9月30日)。応募締切は令和8年(2026年)10月30日(金)18:00で、賃上げなどの要件を満たす3〜5年の事業計画が必要です。以下は2026年9月時点で公式サイトと公募要領(第1回、1.2版)を確認した内容です。

制度の概要

実施するのは独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)です。公募要領では、中小企業等が行う技術的革新性のある製品・サービスの開発、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化を後押しし、企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを目的としています。

申請枠は「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つです。

第1回公募のスケジュール(2026年9月時点)

項目 日程
公募開始 令和8年6月29日(月)
申請受付開始 令和8年9月30日(水)
応募締切 令和8年10月30日(金)18:00(厳守)
採択発表 令和9年1月頃(予定)

公式サイトの公募スケジュールページでは、当初の申請受付(令和8年8月31日)・締切(令和8年9月30日)・採択発表(令和8年12月予定)から、上の日程に変更されたことが示されています。申請は電子申請システムでのみ受け付けられます。採択後の交付申請は、原則として採択発表日から2か月以内が締切とされています。

申請枠ごとの補助上限額・補助率

括弧内は、賃上げ特例(補助上限額の引上げ)または地域別最低賃金引上げ特例(補助率の引上げ)の適用を受ける場合の値です。

革新的新製品・サービス枠

革新的な新製品・新サービスの開発を支援する枠です。既存の製品・サービスの生産プロセスの改善や、機械装置を導入するだけで新製品・新サービスの開発を伴わないものは対象外とされています。

従業員数 補助上限額
1〜5人 750万円(850万円)
6〜20人 1,000万円(1,250万円)
21〜50人 1,500万円(2,500万円)
51人以上 2,500万円(3,500万円)
  • 補助下限額:100万円
  • 補助率:中小企業者1/2(2/3)、小規模企業・小規模事業者と再生事業者は2/3
  • 補助事業実施期間:交付決定日から10か月以内(ただし採択発表日から12か月以内)
  • 機械装置・システム構築費は必須の経費とされています

新事業進出枠

既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。製品等がその企業にとって新規性を持ち、かつ対象市場がその企業にとって新しい市場であることが求められます。ここでの新規性は「世の中で初めて」という意味ではなく、その企業にとっての新規性です。既存製品の増産、単なるメニューの追加、商圏が違うだけのものなどは該当しない例として挙げられています。

従業員数 補助上限額
1〜20人 2,500万円(3,000万円)
21〜50人 4,000万円(5,000万円)
51〜100人 5,500万円(7,000万円)
101人以上 7,000万円(9,000万円)
  • 補助下限額:750万円
  • 補助率:1/2(2/3)(小規模企業・小規模事業者、再生事業者を含む)
  • 補助事業実施期間:交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)
  • 機械装置・システム構築費または建物費のいずれかを必ず含むこととされています

グローバル枠

自社の製品等を活用して自発的に新たな海外販路を開拓するために、国内の製造等拠点を強化する取り組みを支援する枠です。取引先主導の事業は対象外とされています。

  • 補助上限額:新事業進出枠と同じ(従業員数に応じて2,500万円〜7,000万円、賃上げ特例適用時3,000万円〜9,000万円)
  • 補助下限額:750万円
  • 補助率:2/3
  • 補助事業実施期間:交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)
  • 対象経費に海外旅費、通訳・翻訳費が加わります

主な補助対象経費

機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費が共通の対象経費です。建物費は新事業進出枠とグローバル枠のみ、海外旅費と通訳・翻訳費はグローバル枠のみが対象です。経費区分ごとに上限があり、申請時に計上した経費がすべて認められるわけではない点も明記されています。

満たす必要がある基本要件

補助事業終了後3〜5年の事業計画で、次の要件を満たすことが求められます。

  1. 付加価値額要件:付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費の合計)の年平均成長率4.0%以上
  2. 賃上げ要件:一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上。目標値を交付申請時までに従業員等に表明する必要があり、未達の場合は未達成率に応じた補助金の返還が求められます
  3. 事業場内最賃水準要件:毎年、事業場内最低賃金が補助事業実施場所の都道府県の地域別最低賃金より30円以上高いこと。未達の年は返還が求められます
  4. ワークライフバランス要件:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、「両立支援のひろば」で公表していること
  5. 子育て等に関する職場環境整備に向けた取り組みを行うこと
  6. 金融機関から資金提供を受ける場合は、その金融機関から事業計画の確認を受けていること

賃上げ特例を受ける場合は、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を合計6.0%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より合計50円以上高くすることが追加で求められ、未達の場合は引上げ分の補助金の全額返還とされています。

対象者と対象外になりやすいケース

対象は、日本国内に本社と補助事業実施場所を持つ中小企業者、小規模企業者・小規模事業者などです(公募要領に業種別の資本金・従業員数の基準があります)。次のような場合は対象外とされています。

大企業の新規事業担当者が注意する点

  • 大企業本体は対象外です
  • 同一の大企業が発行済株式の2分の1以上を持つ会社、大企業が合計で3分の2以上を持つ会社、大企業の役員・職員を兼ねる人が役員総数の2分の1以上を占める会社などは「みなし大企業」として対象外です
  • 親会社が議決権の50%超を持つ子会社は親会社と同一事業者とみなされ、グループで1回の公募につき1申請に限られます

大企業の子会社や合弁会社で活用を考える場合は、株主構成と役員構成を公募要領の定義に照らして確認してください。

起業家・スタートアップが注意する点

  • 応募申請時点で従業員数が0名の事業者は対象外です
  • 新事業進出枠は、新規設立・創業後1年に満たない事業者は対象外で、最低1期分の決算書の提出が必要です
  • ベンチャーキャピタルからの出資については、投資事業有限責任組合などが株式を保有する場合は、みなし大企業の規定を適用しないとされています

申請までに時間がかかる準備

  • GビズIDプライムアカウント:発行に1週間程度かかるとされています
  • 一般事業主行動計画の公表:公表手続きに1〜2週間程度かかり、2週間以上の余裕をもって公表申請するよう案内されています
  • 事業計画の作成:申請者自身が作成する必要があり、外部の支援者の助言を受けることは認められていますが、作成自体を申請者以外が行うことは認められていません。支援者がいる場合は、名前・支援内容・報酬額などを電子申請システムに入力する必要があります

採択後の注意点

  • 交付決定日より前に契約(発注を含む)した経費は補助対象になりません
  • 補助金は、実績報告と確定検査の後に請求して支払われる流れです。事業の実施中は、自社で費用を立て替える資金が必要です
  • 書面審査に加えて、必要に応じてオンラインの口頭審査(1事業者15分程度)があり、申請事業者自身(法人代表者等)が対応する必要があります。コンサルタントなど社外の人の同席は認められていません
  • 取得した財産は専ら補助事業に使う必要があり、処分には制限があります

補助金を含めた資金調達の全体像は新規事業のお金の集め方:社内予算・補助金・融資・出資の違い、事業計画の組み立ては新規事業の事業計画書に書くことで解説しています。

制度は改定されます。申請の前に公式情報と専門家(税理士・中小企業診断士など該当するもの)に確認してください。公募要領は改訂されることがあるため、最新版を公式サイトで確認することが前提です。

参考資料

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