事業計画

新規事業で確認すべき規制と、グレーゾーン解消制度・規制のサンドボックス制度

新規事業の規制確認は、事業を「誰が、誰に、何を、どう提供し、どう対価を得るか」という行為に分解し、行為ごとに関係する法令を洗い出すことから始めます。法令の適用がはっきりしない場合は、産業競争力強化法に基づく「グレーゾーン解消制度」で事前に国に確認でき、規制があるために実施が難しい場合は「規制のサンドボックス制度」や「新事業特例制度」を検討できます。

なぜ早い段階で規制を確認するのか

事業を始めた後で規制に抵触していると分かると、事業の停止や大幅な作り直しが必要になることがあります。経済産業省の「利用の手引き」も、グレーゾーン解消制度の趣旨として、事業開始後に規制当局から規制に抵触すると指摘されて事業ができなくなる事態を未然に防ぐことを挙げています。

また、許認可が必要な事業では、取得までの期間が事業計画のスケジュールに直接影響します。規制の確認は、アイデアの検証と並行して、事業計画を固める前に始めるのが理想です。

規制を確認する手順

1. 事業を行為に分解する

「オンラインで健康相談サービスを提供する」のような事業の説明のままでは、どの法令が関係するかを判断できません。次のような問いに答える形で、行為に分解します。

  • 誰が提供するのか(自社、提携先、個人の登録者など)
  • 誰に提供するのか(事業者、一般消費者、未成年を含むか)
  • 何を提供するのか(モノ、情報、作業、場所、資金のやり取りなど)
  • どのように提供するのか(対面、オンライン、配送、現地での作業など)
  • どのように対価を得るのか(販売、手数料、会費、広告など)
  • 扱う情報は何か(個人情報、健康や金銭に関する情報など)

2. 行為ごとに関係しそうな法令を洗い出す

分解した行為ごとに、次のような観点で関係しそうな法令を洗い出します。

  • 業として行うために許可・登録・届出が必要な行為:医療、医薬品、金融・決済、保険、運送、旅行、不動産、人材紹介・派遣、飲食、宿泊など、業種ごとの法律(業法)
  • 消費者との取引:通信販売の表示、広告の表示、契約の条件など
  • 個人情報の取り扱い:取得・利用・第三者への提供のルール
  • 製品の安全や表示:電気製品、食品、化粧品などの基準や表示
  • 働き方:業務委託の相手方の保護、雇用のルール

法令の条文は、電子政府の総合窓口(e-Gov)の「e-Gov法令検索」で読むことができます。ただし、法令の解釈には通達やガイドライン、過去の事例などが関係するため、条文だけで判断せず、所管の省庁の公表資料もあわせて確認します。個人情報の扱いは新規事業での個人情報の取り扱い、通信販売の表示はネット販売を始めるときの特定商取引法の表示でも取り上げています。

3. 専門家と所管省庁に確認する

関係しそうな法令が分かったら、弁護士などの専門家に相談します。解釈がはっきりしない点は、法令を所管する省庁に問い合わせることもできます。省庁によっては、企業が予定している具体的な行為が特定の法令の適用対象になるかを事前に確認する「法令適用事前確認手続」を設けています。例えば消費者庁は、この手続の対象法律と照会書の様式、過去の回答を公表しています。

それでも適用の有無がはっきりしない場合や、規制があるために事業ができない場合に使えるのが、次に説明する制度です。

産業競争力強化法に基づく3つの制度

産業競争力強化法には、事業者単位で、個々の事業内容に即して事業化や規制改革を進めるための制度として、次の3つがあります。

制度 使う場面 結果
グレーゾーン解消制度 規制が自分の事業に適用されるかどうかが不明確なとき 規制の適用の有無について、国の回答が得られる
規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度) 新しい技術やビジネスモデルの実用化が、現行規制との関係で難しいとき 認定を受けた計画に沿って実証を行い、得られたデータを規制の見直しにつなげる
新事業特例制度 規制がボトルネックになっており、代替措置で安全性等を確保できるとき 規制の特例措置が整備され、計画の認定を受けた事業者がそれを活用できる

経済産業省の手引きによると、いずれの制度も、規模や業種を問わず利用でき、個人事業主やNPO法人、複数の事業者の連名でも利用できます。対象となるのは法律と法律に基づく命令(告示を含む)に根拠がある規制で、税などの公租公課や手数料、地方公共団体が条例に基づいて独自に行っている規制は対象外とされています。受付は通年で、申請前の事前相談が求められています。

グレーゾーン解消制度

制度の概要

グレーゾーン解消制度は、事業者が、現行の規制の適用範囲が不明確な場合でも安心して新事業活動を行えるよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度です。

対象は「新事業活動」で、手引きでは、照会する事業者がすでに実施している事業は新事業活動に当たらず、制度を利用できないとされています。事業を始める前に使う制度だという点に注意が必要です。

手続の流れ

  1. 事業の内容と確認したい事項を整理し、事業を所管する省庁に相談する
  2. 事業所管省庁のサポートを受けながら、照会書(様式第九)を作成する
  3. 主務大臣(事業所管大臣と規制所管大臣)に照会書を提出する
  4. 主務大臣は、照会書を受理した日から原則1か月以内に回答する
  5. 照会した事業と回答の概要が公表される

1か月以内に回答できないやむを得ない理由がある場合は、1か月を超えない期間ごとに、その旨と理由が通知されます。回答書そのものは公表されませんが、営業上の秘密に配慮しつつ、事業の概要と回答の内容が公表されます。

照会書に書くこと

照会書には、事業の目標、事業の内容(実施主体、概要、場所)、実施時期、確認を求める法令の規定、具体的な確認事項と自社の見解などを書きます。手引きでは、「○○規制が支障となっているのではないか」ではなく、「○○法に基づく○○が規制の対象となっているかどうかが明らかでないため、○○法に基づく許可を受けなくても、○○を行うことができるのか確認したい」というように、確認したい点をできるだけ具体的に書くよう求めています。

注意点

手引きは、確認されるのは照会した法令に基づく規制の適用の有無に限られ、事業がすべての法令に照らして「合法」であることを確認する制度ではないと注意しています。関係しそうな法令は、照会の前に漏れなく洗い出しておく必要があります。

公表された回答を調べる

各省庁は、グレーゾーン解消制度での回答を公表しています。例えば消費者庁や個人情報保護委員会、厚生労働省のウェブサイトには、照会された事業の概要と回答が掲載されています。自社の事業に近い事例がないかを先に調べると、照会の要否や論点の整理に役立ちます。なお、手引きによると、過去に他の事業者が照会した内容と似ていても、要件を満たせば新たに照会できます。

規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)

制度の概要

内閣官房の説明では、規制のサンドボックス制度は、IoT、ブロックチェーン、ロボット等の新たな技術の実用化や、プラットフォーマー型ビジネス、シェアリングエコノミーなどの新たなビジネスモデルの実施が現行規制との関係で困難である場合に、事業者の申請に基づき規制官庁の認定を受けた実証を行い、得られた情報やデータを用いて規制の見直しにつなげていく制度です。

内閣官房の資料では、期間や参加者を限定することなどにより、既存の規制の適用を受けることなく実証を行える環境を整えるものと説明されています。2018年に生産性向上特別措置法に基づいて設けられ、2021年に改正産業競争力強化法で恒久化されました。

手続の流れ

  1. 内閣官房の政府一元窓口(新技術等社会実装推進チーム)に相談する
  2. 主務大臣(規制所管省庁・事業所管省庁)に新技術等実証計画の認定を申請する
  3. 主務大臣が、内閣府に設置された新技術等効果評価委員会の意見を聴いたうえで認定する
  4. 認定された計画に沿って実証を行う
  5. 実証の終了後、原則3か月以内に実施状況を報告する。規制所管省庁は結果を踏まえて規制の見直しを検討する

手引きでは、主務大臣は申請書を受理した日から原則1か月以内に委員会の意見を聴き、意見が述べられた日から原則1か月以内に認定証を交付するとされています。内閣官房のよくある質問では、正式な申請書を提出してから認定まで、実証内容によるものの約1か月から2か月程度とされています。実証期間は、データを取得するために必要な期間が原則で、例えば3か月や6か月などの設定が可能とされています。

申請書に書くこと

内閣官房の資料によると、申請書には主に次の事項を記載します。

  • 実証の目標
  • 新技術等の内容、実証の内容と実施方法、規制についての分析の内容
  • 実施期間と実施場所
  • 参加者等の具体的な範囲と同意の取得方法
  • 実施に必要な資金の額と調達方法
  • 関係する規制の法令の規定
  • 規制の特例措置の内容(適用を受ける場合)

認定の基準には、実証が円滑かつ確実に実施される見込み(実施体制、参加者の同意取得、安全対策、資金調達など)や、関係法令に違反しないことが含まれます。

実証の組み立て方の例

内閣官房の資料では、関係法令に違反しない形で実証を組み立てた例として、免許を持たない人による電動キックボードの走行実証を公道ではなく大学構内で行った例や、現行法令で認められた方法(内容証明郵便など)を併用しながら、SMSやブロックチェーンを使った債権譲渡の通知を検証した例などが紹介されています。

実績

内閣官房の資料によると、令和7年3月19日時点で33件の計画、152の事業者が認定を受けています。分野はモビリティ、IoT、フィンテック、ヘルスケアなど多岐にわたります。認定されたプロジェクトは、内閣官房のウェブサイトで公表されています。

新事業特例制度

新事業特例制度は、新たな事業活動を行おうとする事業者の提案を受けて、安全性等の確保など代替措置の実施を条件に規制の特例措置を整備し、事業者単位でその適用を認める制度です。手続は2段階です。

  1. 規制の特例措置の求め:代替措置を含めた特例措置の要望書を主務大臣に提出する。主務大臣は、原則として要望書を受理した日から1か月以内に、特例措置を講じるかどうかを通知する
  2. 新事業活動計画の認定:特例措置が整備された後、その措置を活用する新事業活動計画を申請し、認定を受ける。認定する場合は、原則として申請書を受理した日から1か月以内に認定書が交付される

手引きでは、要望書では「○○規制の撤廃」のような漠然とした内容ではなく、どの規定について、どのような代替措置を講じることで、何を可能にするのかを具体的に書くよう求めています。また、特例措置の要望をしていない事業者でも、新事業活動計画の認定を受ければ、他の事業者の提案で設けられた特例措置を活用できるとされています。

そのほかの関連制度

内閣官房のページでは、関連制度として、国家戦略特別区域制度、構造改革特別区域制度、内閣府の「地域限定型 規制のサンドボックス制度」も紹介されています。地域限定型の制度は、国家戦略特区において、自動走行やドローンなど近未来技術の実証実験を迅速・円滑に行うための仕組みです。

どの制度を使うべきか迷う場合、経済産業省の手引きは、内閣官房の政府一元窓口に相談するよう案内しています。内閣官房のページでも、規制に関して問い合わせ先が分からない場合もまず相談するよう呼びかけています。

大企業と起業家で異なる点

大企業の新規事業

法務部門やコンプライアンス部門の確認に時間がかかり、事業の開始が遅れることがあります。事業の行為への分解と関係法令の洗い出しを早めに法務部門と共有し、グレーゾーンの論点を特定しておくと、制度の利用も含めた判断が早くなります。規制のリスクを新規事業全体のリスクの中でどう扱うかは、新規事業のリスクの洗い出し方も参考にしてください。

起業家・スタートアップ

社内に法務担当がいないことが多いため、規制の論点が大きい事業では、早い段階で弁護士に相談する費用を計画に含めておきます。政府一元窓口や事業所管省庁は、制度の利用にあたって事前相談や申請のサポートを行っているため、規制の確認に不安がある場合は、制度の利用を前提にしなくても相談してみる価値があります。

まとめ

規制の確認は、事業を行為に分解し、行為ごとに関係する法令を洗い出し、専門家と所管省庁に確認する順で進めます。適用が不明確ならグレーゾーン解消制度で国に確認でき、規制のために実施が難しいなら規制のサンドボックス制度や新事業特例制度を検討できます。いずれも事前相談から始まるため、事業計画を固める前の早い段階で動き出すことが大切です。

この記事は2026年9月時点で確認できた公式資料に基づいています。制度は改定されます。申請や事業開始の前に、所管省庁の公式情報と弁護士などの専門家に確認してください。

参考資料

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