レイザー&ブレード(替え刃モデル)
本体となる製品を手に取りやすい価格で広く普及させ、その本体で使い続ける消耗品や交換部品の販売から継続的に収益を得る型です。
仕組み
レイザー&ブレードは、ひげそりの「本体(レイザー)」と「替え刃(ブレード)」の関係にたとえた呼び名です。本体を手に取りやすい価格で販売して多くの顧客に使ってもらい、その本体でしか使えない、あるいは本体と組み合わせて使う消耗品を繰り返し買ってもらうことで収益を上げます。プリンターとインク・トナー、コーヒーマシンとカプセル、ゲーム機とソフトなどがよく例に挙げられます。
本体の販売で大きな利益を狙うのではなく、使われている本体の台数(設置台数・稼働台数)を増やすことが、将来の消耗品売上の土台になります。
収益の上がり方
消耗品の売上は「稼働している本体の台数 × 1台あたりの使用量 × 消耗品の単価」で決まります。本体を売った時点では利益が小さくても、その本体が使われ続ける数年間にわたって消耗品の売上が続きます。多くの場合、消耗品は本体よりも利益率が高く、事業全体の利益を支える役割を担います。
逆に言えば、本体を売った後に顧客が使わなくなったり、他社製の互換品や詰め替え品を使ったりすると、想定していた消耗品売上が入らず、本体販売時に抑えた利益を回収できなくなります。そのため、純正品を選んでもらう理由(品質、保証、購入の手間の少なさ)を用意し続けることが重要です。最近は、消耗品の定期配送や、本体と消耗品をまとめた定額契約など、サブスクリプションと組み合わせる例も増えています。
見るべき指標
- 本体の販売台数と、稼働している本体の台数
- 本体1台あたりの消耗品売上と使用量
- 売上に占める消耗品の比率と、本体・消耗品それぞれの利益率
- 純正消耗品の利用率(互換品への流出の程度)
- 本体1台の利益・損失を消耗品で回収するまでの期間
向いている事業・注意点
本体が長く使われ、消耗品の使用が定期的に発生する製品に向いています。消耗品に独自の技術や品質基準があり、本体との相性が重要な場合ほど型が成り立ちやすくなります。
注意点は、顧客から「本体は安いが、消耗品で高く払わされている」と受け止められる危険です。消耗品の価格や、互換品を使えなくする仕組みは、顧客の不満や法的な争いの原因になることがあります。また、印刷量の減少のように利用そのものが減る変化が起きると、稼働台数が維持されていても消耗品売上は減ります。
新規事業で使うとき
この型は、本体の値引き分を後から回収する前提のため、初期に資金が多く必要になります。事業計画では、本体1台あたりの損益と、消耗品で回収するまでの月数を明示し、稼働率や使用量が想定を下回った場合の損益分岐も計算しておきます(損益分岐点の計算と使い方)。
また、顧客1台あたりの生涯売上と獲得費用の考え方はユニットエコノミクス(LTV・CAC)の考え方が参考になります。最初は小さな地域や顧客層で、実際の消耗品の購入頻度を確かめてから規模を広げると、前提の誤りによる損失を抑えられます。
この型の事例
HP Inc. プリンター本体とインク・トナーなどのサプライ(Printing事業)
プリンター本体を販売し、その本体で繰り返し使われるインク・トナーなどのサプライからプリンティング事業売上の約3分の2を得ている事例です。
資料:Form 10-K(FY2025、2025年10月31日終了年度)
ブラザー工業株式会社 プリンター・複合機とトナー・インクなどの消耗品(プリンティング・アンド・ソリューションズ事業)
プリンターや複合機の本体と、トナー・インクなどの消耗品を組み合わせて販売し、純正消耗品の利用促進や消耗品の自動配送サービスにも取り組んでいる事例です。
資料:有価証券報告書(2026年3月期)、2026年度 第1四半期 決算説明会資料
シスメックス株式会社 検体検査機器と検査試薬・サービス(ダイアグノスティクス事業)
血液や尿などの検体検査機器を医療機関や検査センターに設置し、その機器で使われる試薬とサービスから売上の7割超を得ている事例です。
資料:2026年3月期 決算短信・決算概要資料・通期決算説明会スクリプト(2026年5月公表)