補助金と助成金の違いと探し方:名称より「審査の有無」と「所管」で見分ける
補助金と助成金の違いは、実務では「審査で選ばれる制度か」「要件を満たせば原則受給できる制度か」で考えると整理しやすくなります。ただし制度名の「補助金」「助成金」は必ずしもこの区別と一致しないため、名称ではなく所管と募集要項で見分け、公的な検索サイトから候補を探すのが確実です。
言葉の定義は用語集で扱っているため、この記事では、違いが実務にどう影響するかと、制度の探し方に絞って説明します。
一般的な違い
中小企業庁のミラサポplusでは、助成金は要件を満たして申請すれば原則受給できるものが多いのに対し、補助金は要件を満たして申請しても必ずもらえるわけではない、と説明しています。補助金は、事業計画や決算書などの書類が審査され、採択されるかどうかが決まります。
| 観点 | 補助金(審査型) | 助成金(要件型) |
|---|---|---|
| 受給の決まり方 | 審査で採択された事業者だけ | 要件を満たせば原則受給 |
| 申請の時期 | 公募要領で定める公募期間内 | 支給要領で定める期間内(例:訓練開始前の計画届、訓練終了後の支給申請) |
| 代表的な所管 | 経済産業省・中小企業庁、自治体など | 厚生労働省(雇用関係助成金)など |
| 準備の中心 | 事業計画書 | 計画届や、雇用契約書・出勤簿・賃金台帳などの労務書類 |
表は一般的な整理であり、例外があります。個別の制度では必ず募集要項や支給要領を確認してください。
名称だけで判断できない例
東京都と東京都中小企業振興公社の「創業助成事業」は、名前は「助成」ですが、書類審査と面接審査を経て助成事業者が決まる審査型の制度です。令和8年度は年間の採択予定件数が200件と公表されています。詳しくは東京都の創業助成事業の要点で解説しています。
逆に、厚生労働省の雇用関係助成金は、支給要領に定める要件を満たしているかを審査して支給・不支給を決める仕組みです。事業計画の優劣を競うのではありませんが、要件を一つでも欠くと支給されません。「助成金だから誰でももらえる」わけではない点に注意が必要です。
審査型の補助金で押さえること
ミラサポplusの説明をもとに、審査型の補助金の共通点を整理します。
- 後払い:原則として事業終了後の精算払いです。いったん経費の全額を自社で支払う必要があります
- 自己負担がある:補助率によって異なりますが、事業費の一部は自己負担です
- 時間がかかる:公募締切から採択まで通常2か月程度かかり、その後に交付申請の手続きがあるため、事業の開始は数か月後になる点に注意が必要とされています
- 公募回ごとに条件が変わる:同じ補助金でも公募回によって条件が変わる場合があるため、最新の公募要領を確認します
新規事業の立ち上げでは、スケジュールと資金繰りへの影響が大きいのが審査型の補助金です。交付決定の前に発注した経費は対象外になることが多いため、開発や出店の日程を補助金の日程に合わせられるかを最初に確認します。
厚生労働省の雇用関係助成金で押さえること
厚生労働省の「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」では、受給対象となる事業主として、次の条件が示されています。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること(支給申請日と支給決定日の時点で雇用保険被保険者がいること)
- 期間内に申請を行うこと
- 支給のための審査に協力すること(書類の整備・保管、求めに応じた提出、実地調査への協力)
支給申請期間は、原則として各助成金の支給要領に定める日の翌日から2か月以内です。
起業家は「従業員を雇ってから」が前提
雇用保険の被保険者がいることが前提のため、創業者1人だけの会社では雇用関係助成金の多くは対象になりません。最初の従業員を採用する時期、就業規則などの社内制度を整える時期に、使える助成金を調べるのが現実的です。
大企業も使える制度がある
中小企業庁系の補助金の多くは中小企業が対象ですが、雇用関係助成金には大企業も対象で、中小企業と助成率が異なるものがあります。たとえば人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業に必要な知識・技能を社員に習得させる訓練が対象で、大企業にも助成率が設定されています。詳しくは人材開発支援助成金の要点で解説しています。
不正受給のペナルティが重い
厚生労働省は、不正受給の場合は助成金の全額返還に加えて延滞金と不正受給額の2割に相当する額の納付が必要で、不正受給決定日から5年間は雇用関係助成金を受給できないとしています。また、厚生労働省の委託事業者を名乗って、助成金の申請や受給額の無料査定をうたう勧誘を行う者の情報が寄せられているとして、注意を呼びかけています。
制度の探し方
1. 公的な検索サイトで候補を出す
| サイト | 運営 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| ミラサポplus | 中小企業庁 | 国の補助金の検索、地域の補助金・助成金の検索、公募スケジュールの確認 |
| 支援情報ヘッドライン(J-Net21) | 中小企業基盤整備機構 | 国・都道府県の補助金・助成金、セミナーなどをカテゴリと地域で検索。RSSやメールマガジンもある |
| Jグランツ | デジタル庁 | 補助金の電子申請システム。「補助金を探す」から公開中の補助金を検索できる |
| 雇用関係助成金検索ツール | 厚生労働省 | 取組内容から雇用関係助成金を探す |
国の補助金と自治体の制度、厚生労働省の助成金は、それぞれ情報の置き場所が違います。一つのサイトだけで探し終えたと判断しないことが大切です。
2. 自治体と支援機関の情報を確認する
都道府県や市区町村、その外郭団体(東京都であれば東京都中小企業振興公社など)が独自の制度を持っています。事業所の所在地の自治体のサイトや、商工会・商工会議所の案内もあわせて確認します。
3. 公募要領・支給要領を一次情報として読む
検索サイトの概要は入口にすぎません。対象者、対象経費、補助率・助成率、上限額、スケジュール、提出書類は、必ず公募要領や支給要領の原文で確認します。まとめ記事や民間サイトの情報は古くなっていることがあります。
選ぶときの確認点
候補が見つかったら、次の順で絞り込みます。
- 対象者に当てはまるか:企業規模(中小企業か)、所在地、業歴、創業前でも申請できるか
- やりたいことが対象経費に入るか:新規事業で使いたい経費(開発費、広告費、人件費、研修費など)が対象かどうか
- 日程が合うか:申請締切、交付決定の時期、事業期間が、自社の計画と合うか
- 資金繰りが回るか:後払いの間の資金をどう用意するか
- 申請の準備が間に合うか:GビズIDプライムの取得、事前に受けておく支援や計画届などの前提手続き
電子申請の準備は補助金の電子申請(jGrants・GビズID)の準備で解説しています。
大企業と起業家で異なる点
大企業の新規事業部門の場合
中小企業向けの補助金の多くは対象外です。まず確認したいのは、大企業も対象になる制度(厚生労働省の雇用関係助成金の一部など)と、協業先の中小企業・スタートアップが申請する形で関われる制度です。子会社として事業を切り出す場合も、親会社の出資比率によって「みなし大企業」として対象外になる制度があるため、要件を確認します。
起業家・スタートアップの場合
創業前から申請できる制度、創業後の年数に上限がある制度、従業員を雇ってから使える制度が混在しています。創業の時期、法人設立の時期、最初の採用の時期を並べて、どの時点でどの制度が使えるかを整理しておくと、申請の機会を逃しにくくなります。
制度は改定されます。申請・契約の前に公式情報と専門家(社会保険労務士・税理士など該当するもの)に確認してください。
参考資料
進め方に迷ったら、相談してください
起業家ポータル のメンバーが話を伺います。初回の相談は無料です。
同じ工程の記事
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の基本:形態の選び方と運営の論点
CVCには本体投資・CVCファンド・VCへのLP出資といった形態があります。目的に応じた選び方、経済産業省の手引きが挙げる運営上の課題、オープンイノベーション促進税制、公取委・経産省の出資指針を解説します。
VCからの資金調達の流れ:準備から払込・登記まで
ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達は、準備、VC探しと面談、デューデリジェンス、タームシート、契約、会社法の手続き、調達後の報告という順に進みます。各段階でやることと、つまずきやすい点を公的なガイドラインをもとに整理します。
タームシートの主な条項:優先株式・事前承認・買取請求権の読み方
VCから優先株式で資金調達するときのタームシートについて、発行条件、優先分配(参加型・非参加型)、取得請求権と希釈化防止、事前承認、株式買取請求権、みなし清算など主な条項の意味と交渉の考え方を、経済産業省のガイドラインをもとに解説します。
資本政策の基本:持株比率の設計と資本政策表の作り方
資本政策は、誰に、いつ、どれだけの株式を、いくらで渡すかの計画です。会社法の決議要件から見た持株比率の意味、資本政策表の作り方、創業期に起きやすい失敗、ストックオプションや上場を見据えた考え方を、公的な資料をもとに解説します。