人材確保

立ち上げ期のチーム運営:兼務とリモートで回すための仕組み

立ち上げ期のチームを兼務とリモートで回すには、「誰がどれだけの時間を使えるか」を数字で合意し、全員がそろわなくても前に進める記録と会議の仕組みを作ることが要になります。そのうえで、社員がテレワークをする場合は、労働時間の把握の方法や費用負担などのルールを先に決めておく必要があります。

チームの役割の分け方や最初に決めておくことは新規事業の最初のチームの作り方で扱っています。この記事では、チームを組んだ後の日々の運営に絞って整理します。

兼務メンバーの時間を確保する

時間の割合を数字で合意する

兼務のメンバーが「できる範囲で手伝う」状態では、既存業務が忙しくなると新規事業の作業が止まります。最初に、新規事業に使う時間を「毎週火曜と木曜の午後」「業務時間の3割」のように具体的に決めます。

大企業の場合は、この合意を本人だけでなく、元の部署の上司とも交わします。上司が合意していないと、本人は既存業務を優先せざるを得ません。あわせて、新規事業への貢献を人事評価にどう反映させるかも決めておきます。評価の考え方は新規事業担当者の人事評価を参照してください。

スタートアップの場合は、創業メンバーが前職や副業と並行して関わる時期があります。その場合も、週に何時間、どの曜日に使えるかを互いに共有し、約束した時間を守れないときは早めに伝えることをルールにします。

兼務メンバーに任せる仕事の選び方

兼務のメンバーには、他の人の作業を止めてしまう「待ち」が発生しにくい仕事を任せます。例えば、期限に余裕のある調査、担当する顧客の聞き取り、特定の専門領域の確認などです。逆に、毎日の判断が必要な仕事や、多くの人の作業の起点になる仕事は、専任のメンバーが持つようにします。

専任化を判断するタイミング

兼務で進められるのは、検証の範囲が小さいうちです。顧客との実証実験が始まる、開発の作業量が増えるなど、兼務では速度が追いつかなくなったら、専任化や人員の追加を検討します。このタイミングを段階ごとの審査にあわせて決めておくと、判断しやすくなります。

会議と記録のリズムを決める

メンバーの働く時間や場所がばらばらなチームでは、「いつ、何を、どこで共有するか」を決めておかないと、情報が一部の人に偏ります。

定例の会議は目的ごとに分ける

会議 頻度の例 目的
短い進捗確認 週1〜2回、15分程度 今週やること、困っていることの共有
検証の振り返り 週1回または隔週 検証の結果、わかったこと、次に試すことを決める
方向性の確認 月1回 仮説の見直し、スポンサーや関係者への報告の準備

兼務のメンバーが多い場合は、全員が出られる時間帯に振り返りの会議を置き、進捗確認は参加できる人だけで行う、という分け方もできます。

決めたことを一か所に記録する

会議に出られなかった人が後から追いつけるよう、次のものを一か所にまとめて記録します。

  • 決定の記録:何を、いつ、誰が、どんな理由で決めたか
  • 顧客の聞き取りの記録:誰から何を聞いたか、どの仮説に関係するか
  • 検証の結果:何を試し、結果はどうだったか
  • 未解決の問い:まだ答えが出ていないこと

特に決定の記録は、後から加わったメンバーが「なぜこうなっているのか」を理解するのに役立ちます。記録を書く担当を会議ごとに決めておくと、書かれないまま終わることを防げます。

非同期のやり取りのルール

チャットなどで非同期にやり取りする場合は、次のようなルールを決めておくと、兼務やリモートのメンバーも動きやすくなります。

  • 返事がほしい期限を書く(「明日の正午までに意見がほしい」など)
  • 決めてほしいことと、共有だけのことを分けて書く
  • 話し合いが長くなったら、短い通話に切り替え、結論をチャットに書き戻す
  • 勤務時間外の連絡に、すぐに返事をしなくてよいことを明確にする

社外のメンバーとの情報共有

立ち上げ期のチームには、副業人材や業務委託のメンバーが加わることがよくあります。社外のメンバーには、アクセスできる情報の範囲を決め、共有する場所を社内向けと分けておきます。受け入れ時の契約や情報管理の考え方は副業人材を新規事業に迎えるときの契約・情報管理・評価で扱っています。

業務委託のメンバーを、社員と同じ定例会議に毎回出席させ、日々のタスクを細かく割り当てると、実態が雇用と判断される方向に働くことがあります。業務委託のメンバーには、依頼した成果物と期限、報告の方法を決めて関わってもらうのが基本です。

テレワークの労務管理

社員がリモートで働く場合は、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年3月改定)が参考になります。ガイドラインは、導入目的、対象業務、対象者の範囲、実施場所、実施可能日、申請の手続き、費用負担、労働時間の管理方法、中抜け時間の扱い、通常時と緊急時の連絡方法などについて、あらかじめ労使で十分に話し合いルールを定めておくことが重要だとしています。

労働時間の把握

ガイドラインは、テレワークでの労働時間の把握について、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎として始業・終業の時刻を確認する方法を示しています。新規事業のチームは作業時間が不規則になりやすいため、誰がどのように記録するのかを最初に決めておきます。

中抜け時間の扱い

テレワークでは、家事や通院などで一時的に業務から離れる「中抜け」が生じることがあります。ガイドラインによれば、中抜け時間は、使用者が把握することとしても、把握せずに始業・終業の時刻だけを把握することとしても、どちらでもよいとされています。把握する場合は休憩時間として扱って終業時刻を繰り下げる、時間単位の年次有給休暇として扱うなど、把握しない場合は始業から終業までの時間を休憩時間を除いて労働時間として扱うなどの方法が挙げられており、どちらにするかを就業規則などで定めておくことが重要だとされています。

費用の負担

通信費や電気代、機器などの費用を労使のどちらがどう負担するかも、あらかじめ決めて就業規則などに定めておくことが望ましいとされています。特に、労働者に情報通信機器や作業用品などの負担をさせる定めをする場合は、就業規則に規定しなければならないとされています(労働基準法第89条第5号)。なお、同条により、常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し、届け出る義務があります。スタートアップで人数が増えてきたら、テレワークのルールも含めて就業規則を整えます。

新しく加わったメンバーへの配慮

ガイドラインは、新入社員、中途採用の社員、異動直後の社員は、上司や同僚に聞きたいことが多く不安が大きい場合があるため、テレワークではコミュニケーションの円滑化に特段の配慮をすることが望ましいとしています。新規事業のチームに途中から加わる人も同じです。最初の数週間は、決定の記録を一緒に読む時間や、既存メンバーとの短い面談を意識して設けます。

評価で不利にしない

ガイドラインは、時間外などのメールに対応しなかったことを理由に不利な人事評価をすることや、オフィスに出勤していることを理由に高く評価することは、適切な人事評価とはいえないとしています。リモートのメンバーが評価で不利にならないよう、評価の対象となる成果や行動をあらかじめ示しておきます。

運営の見直し

チームの運営方法は、一度決めたら終わりではありません。月に一度程度、次の点をチームで振り返ります。

  • 兼務のメンバーが、約束した時間を実際に使えているか
  • 会議に出られなかった人が、記録だけで状況を理解できているか
  • 返事待ちで止まっている作業がないか
  • リモートのメンバーと出社しているメンバーの間で、情報の差が生まれていないか

まとめ

兼務とリモートが混ざる立ち上げ期のチームでは、使える時間を数字で合意し、会議と記録のリズムを決めて、全員がそろわなくても前に進める状態を作ります。社員がテレワークをする場合は、労働時間の把握、中抜け、費用負担のルールを就業規則などで先に定め、新しく加わった人や離れた場所で働く人が不利にならないよう運営します。

制度は改定されます。就業規則の整備などは、公式情報を確認のうえ社会保険労務士に相談してください。

参考資料

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