新規事業の最初のチームの作り方
新規事業の最初のチームは、少人数でも「顧客の課題を深く知る人」「解決策を形にする人」「判断して前に進める人」の3つの役割がそろっていることが何より重要です。最初から全ての専門家をそろえる必要はなく、足りない役割は社外の人材や外部の協力で補い、事業の段階に合わせてチームを組み替えていく前提で考えます。
この記事では、最初のチームに必要な役割、人の集め方と働き方の組み合わせ、最初に決めておくこと、よくある失敗を、大企業の新規事業と起業の場合に分けて整理します。
最初のチームに必要な3つの役割
顧客の課題を深く知る人
新規事業の初期に最も重要な仕事は、顧客に会い、課題を確かめることです。顧客への聞き取りを自分でこなし、聞いた内容から事業の仮説を修正できる人が必要です。業界の経験者である必要はありませんが、顧客に会いに行くことをいとわない姿勢は欠かせません。
解決策を形にする人
聞き取った課題に対して、試せる形のものを作る人です。ソフトウェアの事業なら開発やデザインができる人、製造業の事業なら試作ができる人が当たります。最初はノーコードツールや外部の開発会社で補うこともできますが、チームの中に「作ることを理解し、外部に的確に依頼できる人」がいると、検証の速度が大きく変わります。
判断して前に進める人
限られた情報で方針を決め、社内外の調整を行い、資源を確保する人です。大企業ではプロジェクトの責任者、起業では代表者がこの役割を担うことが多いです。判断の責任者があいまいなチームは、議論はしても前に進みません。
1人が複数の役割を兼ねてもよい
少人数のチームでは、1人が複数の役割を兼ねるのが普通です。大切なのは、3つの役割のうち誰も担っていないものがないことです。チームを組むときに、役割ごとに担当者の名前を書き出し、空白がないかを確認してください。
チームの人数と構成
最初のチームは少人数から始めるのが基本です。人数が増えると、情報共有や意思決定に時間がかかり、方向転換も難しくなります。新規事業の初期は仮説がよく変わるため、全員が同じ情報を持ち、すぐに方向を変えられる規模が向いています。
人を増やすのは、仮説がある程度確かめられ、やるべき仕事がはっきりしてからで十分です。「人が足りないから進まない」と感じたときは、まず仕事の優先順位を見直し、やらなくてよい仕事を減らせないかを考えます。
人の集め方と働き方の組み合わせ
最初のチームは、全員が専任の正社員である必要はありません。役割ごとに、次のような働き方を組み合わせることができます。
- 専任のメンバー(社員、創業者)
- 兼任のメンバー(既存業務と兼務する社員)
- 副業・兼業で関わる社外の人材
- 業務委託の専門家や外部の開発会社
- 顧問やアドバイザー
中心となる「判断して前に進める人」と「顧客の課題を深く知る人」は、できるだけ専任にします。兼任では、既存業務の締め切りに押されて新規事業の優先度が下がりがちだからです。一方、専門性の高い仕事(法務、特定の技術、デザインなど)は、必要な期間だけ社外の人材に関わってもらう方法が効率的です。
働き方によって、確認すべき法令や契約が異なります。例えば、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、雇用される形で副業・兼業をする人については、労働基準法第38条第1項により事業主を異にする場合も労働時間を通算するとされている一方、フリーランスや顧問など労働基準法が適用されない形で関わる場合は、労働時間は通算されないと整理されています。社外の人材に関わってもらう場合の契約や情報管理については、副業人材を新規事業に迎えるときの契約・情報管理・評価で詳しく扱っています。
大企業の新規事業の場合
社内から集める
大企業では、まず社内から人を集めることが多いでしょう。方法としては、上司による指名、社内公募、既存部署からの兼任などがあります。社内公募の仕組みについては社内公募・社内起業制度の作り方を参照してください。
社内から集めるときに注意したいのは、既存事業で評価の高い人が、新規事業でも力を発揮するとは限らない点です。既存事業では、決まった目標を確実に達成する力が評価されやすい一方、新規事業では、答えのない状況で仮説を立て、失敗から学んで方向を変える力が求められます。本人の意欲と、不確実な状況への向き合い方を重視して選びます。
専任にするための調整
兼任で始めると、既存業務との板挟みになりがちです。専任にできない場合でも、新規事業に使う時間の割合を上司と明確に合意し、評価にも反映されるようにしておきます。新規事業の成果は短期間では数字に表れにくいため、評価の基準を既存事業と同じにすると、メンバーが挑戦をためらうようになります。
社外の人材を加える
社内にいない専門性や、顧客側の視点を持つ人材は、副業・兼業の人材や業務委託で補う方法があります。社外の人材を加える場合は、社内規程上の手続き(契約の決裁、情報の取扱い、社内システムへのアクセス権限など)に時間がかかることがあるため、早めに関係部署と調整します。
起業の場合
共同創業者と初期メンバー
起業では、最初のチームは創業者と少数の初期メンバーから始まります。3つの役割のうち、自分が担えないものを担える人を共同創業者や初期メンバーに迎えるのが基本です。共同創業者の探し方と、最初に決めておくべきことは共同創業者の探し方と最初に決めておくことで扱っています。
報酬の出し方を先に考える
資金が限られる起業初期は、市場水準の給与を払えないことがあります。その場合、報酬を何で補うのか(株式、将来の役割、柔軟な働き方など)を、正直に説明できるようにしておきます。後から「話が違う」となると、少人数のチームには大きな打撃になります。
知人に頼りすぎない
最初のメンバーを知人や元同僚から集めるのは自然なことですが、関係が近いほど役割や条件の話を後回しにしがちです。親しい間柄でも、役割、報酬、関わる時間、辞めるときの扱いは書面で合意しておきます。
最初に決めておくこと
働き方や組織の形にかかわらず、チームを組んだら次のことを早めに決めて共有します。
目的と検証する仮説
チームが今何を確かめようとしているのかを、全員が同じ言葉で説明できる状態にします。目的があいまいだと、メンバーがそれぞれ別の方向に努力してしまいます。
意思決定の方法
誰が何を決めるのか、意見が割れたときにどう決めるのかを決めておきます。特に大企業では、チームで決めてよいことと、上位の会議体の承認が必要なことの線引きを明確にします。
情報共有の方法
少人数でも、顧客から聞いたこと、試した結果、決めたことを記録し、共有する場所を決めておきます。社外の人材が加わる場合は、どの情報まで共有してよいかも決めます。
役割と期待の確認
各メンバーの役割、関わる時間、期待する成果を合意します。新規事業では役割がよく変わるため、定期的に見直す時期も決めておきます。
よくある失敗
専門家を集めすぎる
最初から各分野の専門家を集めると、それぞれが自分の領域の作業を増やし、顧客への検証が後回しになることがあります。初期に必要なのは、専門性よりも、顧客に会って仮説を確かめ、すぐに試す力です。
役割が重なり、空白ができる
全員が企画や議論に関わり、誰も顧客に会っていない、誰も作っていないという状態は珍しくありません。役割と担当者の対応を書き出して確認します。
チームを固定したまま進める
検証の段階から拡大の段階に進むと、必要な役割も変わります。最初のメンバーがそのまま全ての段階を担うとは限りません。段階ごとにチームの構成を見直すことを、最初からメンバーと共有しておくと、組み替えのときの摩擦が小さくなります。
まとめ
- 最初のチームには「顧客の課題を深く知る人」「解決策を形にする人」「判断して前に進める人」の役割が必要
- 少人数から始め、役割の空白がないかを確認する
- 中心となる役割は専任にし、専門性の高い仕事は社外の人材で補う
- 働き方によって確認すべき法令や契約が異なる
- 目的、意思決定の方法、情報共有、役割と期待を最初に決める
- 事業の段階に合わせてチームを組み替える前提で進める
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