ソリューション・受託開発
顧客の課題に合わせてシステムの企画・開発・運用を請け負い、コンサルティング料や開発費、運用・保守料として対価を受け取るビジネスモデルです。
仕組み
ソリューション・受託開発(SI、システムインテグレーション)は、顧客ごとの要件に合わせてシステムを作り、動かし続けることを請け負うモデルです。仕事の流れは、おおむね次の段階に分かれます。
- 企画・コンサルティング: 業務課題の整理、IT戦略、要件の検討
- 開発・構築: 設計、プログラミング、テスト、パッケージ製品の導入
- 運用・保守: 稼働後の監視、障害対応、改修、データセンターやクラウドの運用
- 物品販売: ハードウェアやライセンスの仕入販売
同じ業界の複数の顧客が共通で使うシステムを提供者側が用意し、利用料を受け取る「共同利用型」の提供形態もあります。
収益の上がり方
開発は案件ごとの売上で、人員(エンジニア)の稼働量にほぼ比例します。契約形態は、成果物の完成に責任を負う請負と、作業の遂行に対して対価を払う準委任に大きく分かれ、どちらかによって赤字リスクの所在が変わります(開発会社との契約の注意点(請負と準委任))。
一方、運用・保守や共同利用型サービスは、システムが動いている間続く継続収入です。開発で顧客と関係を作り、運用で長く収益を得る組み合わせが、この型の基本的な稼ぎ方です。
利益を左右するのは次の点です。
- 見積もりの精度(想定外の工数増加=不採算案件を出さないこと)
- 稼働率(手の空いた技術者を減らすこと)
- 単価(業務知識や上流工程の比率が高いほど上がりやすい)
見るべき指標
- 受注高・受注残高(先の売上の見通し)
- 売上に占める運用・保守など継続収入の比率
- 売上総利益率と不採算案件の発生状況
- 技術者1人あたり売上・利益、稼働率
- 主要顧客への依存度
向いている事業・注意点
業務が複雑で、既製のソフトウェアでは合わない領域(金融、公共、大企業の基幹業務など)に向いています。業界知識が深いほど、同じ業界の次の顧客に展開しやすくなります。
注意点は、売上が人数に比例しやすく急な拡大が難しいこと、見積もりの誤りが直接赤字につながることです。要件が固まらないまま開発を始めると追加工数が膨らみやすいため、MVPの要件定義の進め方で扱うような要件の詰め方が重要です。
新規事業で使うとき
新規事業では、受託開発を「最初の収益源」と「顧客理解の手段」として使う例がよくあります。特定業界の案件を重ねると、各社に共通する機能が見えてきます。それを自社製品やクラウドサービスに切り出せば、人数に比例しない収益源に移ることができます。
ただし、受託の売上が安定すると製品化への投資が後回しになりやすい点には注意が必要です。どの時点で何割の人員を製品開発に回すかを、あらかじめ決めておくと判断がぶれにくくなります。大企業向けの提案・受注の進め方はBtoB新規事業の営業プロセスも参照してください。
この型の事例
TISI株式会社 ITサービス事業(オファリングサービス、金融IT、産業IT等)
業界別の受託開発に加え、自社投資でサービスを作って提供する「オファリングサービス」を独立したセグメントとして育てている、SI企業の事例です。
資料:2026年3月期 決算短信・コーポレートデータ(2026年)
株式会社野村総合研究所 コンサルティング・ITソリューション事業
コンサルティングからシステム開発、運用サービス、金融機関向けの共同利用型システムまでを一貫して提供し、運用サービスが売上の最大項目となっている事例です。
資料:2026年3月期 決算短信・決算説明会資料・有価証券報告書
サイオス株式会社 OSS関連商品の販売・テクニカルサポート、OSSよろず相談室
Red HatやElasticsearch関連のOSS商品の販売とテクニカルサポート、OSSの問い合わせ対応サービスなど、他社が開発したオープンソースを収益化している事例です。
資料:2025年12月期 決算短信・有価証券報告書
株式会社プロレド・パートナーズ 成果報酬型コストマネジメント・コンサルティング
間接材のコスト削減額に応じて報酬を受け取る成果報酬型コンサルティングを主力としてきた企業が、物価上昇下で固定報酬型との組み合わせに比重を移している事例です。
資料:2025年10月期 有価証券報告書・決算短信・通期決算説明資料