予算確保・資金調達 起業家向け

クラウドファンディングの種類と使い分け:購入型・寄付型・投資型

クラウドファンディングを使うなら、まず「支援者に何を返すか」で種類を選びます。商品やサービスを返すなら購入型、何も返さないなら寄付型、配当や株式を返すなら投資型で、適用される法律、集められる金額、事業への効果が大きく異なります。起業家にとっては、購入型は資金調達と需要の検証を兼ねる手段、株式投資型はエクイティによる資金調達の手段と考えると整理しやすくなります。

種類ごとの違い

一般社団法人第二種金融商品取引業協会は、クラウドファンディングを次のように分類しています。

分類 種類 支援者へのリターン 主な規制
投資型 株式型 金銭(配当、株式売却益) 金融商品取引法(第一種金融商品取引業。第一種少額電子募集取扱業務を含む)
投資型 ファンド型(事業型) 金銭(事業収益の配当) 金融商品取引法(第二種金融商品取引業。第二種少額電子募集取扱業務を含む)
投資型 ファンド型(貸付型) 金銭(元本・金利) 金融商品取引法(第二種金融商品取引業)、貸金業法
投資型 不動産 金銭(事業収益の配当) 不動産特定共同事業法
非投資型 購入型 モノ・サービス(金銭以外) 特定商取引法
非投資型 寄付型 なし 特になし

同協会は、投資型は不動産特定共同事業法が適用されるものを除いて金融商品取引法の適用があり、寄付型と購入型は金融商品取引法と自主規制規則の規制対象にならないと説明しています。貸付型は一般にソーシャルレンディングと呼ばれます。

以下では、起業家が自社の資金調達で検討することの多い購入型、寄付型、株式投資型を中心に説明します。

購入型

仕組み

支援者から前払いで代金を集め、その資金で商品やサービスを作り、完成品などをリターンとして届ける方式です。消費者庁の資料「クラウドファンディング(購入型)の動向整理」(2020年9月)では、募集の方式として、期間内に目標金額に達した場合のみ資金を受け取れる「All or Nothing方式」と、目標に達しなくても集まった資金を受け取れる「All in方式」が紹介されています。All or Nothing方式で目標に届かなければ支援はキャンセルされ、返金されます。どちらの方式でも、資金を受け取った場合は約束したリターンを提供しなければなりません。

プラットフォーム事業者は、実行者の申込みを受けて審査し、審査を通過したプロジェクトのページが公開されます。同資料では、プラットフォーム事業者は成功報酬として集まった支援金の一定比率の手数料を実行者から得ること、目標金額を達成できなかったときには手数料が生じないことなどが説明されています。手数料の率やサポートの範囲はプラットフォームごとに違うため、各社の条件を確認します。

起業家にとっての効果

同資料は、実行者にとってのメリットとして、アイデアをもとに資金調達ができること、アイデアや商品に社会性・事業性があるかを確認できること、支援者とのやり取りを通じて利用者のニーズや反応を把握できること、目標達成などを商品のPRや実績づくりに活用できることを挙げています。

株式を渡さずに資金が集まり、同時に「お金を払ってでも欲しい人がいるか」を確かめられる点が、起業家にとっての大きな利点です。ランディングページでの需要検証と組み合わせて使うこともできます。

注意点

同資料は、購入型に特化した法令はないが、ECと同様に、実行者は景品表示法上の事業者や特定商取引法上の販売業者・役務提供事業者に当たることが一般的と考えられると整理しています。

  • 表示:商品の性能や効果を実際より著しく優良であるかのように示すと、景品表示法の優良誤認表示に当たるおそれがあります。開発途中の商品は、未確定の仕様や効果を断定しないようにします
  • 特定商取引法の表示:販売業者として特定商取引法にもとづく表示が必要になるかを、プラットフォームの案内とあわせて確認します
  • 納期と原価:前払いで受け取るため、開発や製造が遅れると、支援者への説明と返金の対応が必要になります。リターンの原価、送料、手数料を差し引いても事業として成り立つ価格設定にします
  • 会計・税務:受け取った支援金の会計処理や税務上の扱いは、リターンの内容などによって変わるため、税理士に確認します

寄付型

支援者はリターンを受け取らず、寄付として資金を提供します。社会課題の解決を目的とする活動や、公益性の高いプロジェクトで使われる方式です。営利企業の事業資金として使う場合は、支援者にとって寄付の目的が明確であることが前提になります。受け取った資金の税務上の扱いは、受け取る側が法人か、どのような法人かによって変わるため、事前に税理士に確認します。

株式投資型

仕組みと上限額

非上場の株式会社が、クラウドファンディング業者(金融商品取引業者)のウェブサイトを通じて、多数の投資家から少額ずつ出資を受け、株式を発行する方式です。日本証券業協会によると、2015年5月に創設された制度で、次のような特徴があります。

  • クラウドファンディング業者は、発行会社の財務状況、事業計画の妥当性、資金使途などを審査し、適当と認めたものだけを取り扱う
  • 同一の会社が株式投資型クラウドファンディングで調達できる金額は、1年間に5億円未満
  • 投資家1人が同一の会社に投資できる金額は、年間200万円を超えない範囲で財産の状況に応じた額、または50万円のいずれか高い額(上限を一律50万円としている業者もある)
  • 投資の勧誘は原則としてウェブサイトの閲覧と電子メールで行う
  • 投資家は申込みの日から8日間は申込みの撤回や契約の解除ができる
  • 募集の終了後も、会社から投資家に事業の状況について定期的な情報提供が行われる

起業家にとっての効果と注意点

顧客やファンに株主になってもらえること、VCとは違う投資家層から資金を集められることが利点です。経済産業省のエンジェル税制のページでは、経済産業大臣の認定を受けた少額電子募集取扱業者(認定ECF)の株式投資型クラウドファンディングで株式を取得した場合も、エンジェル税制の対象になりうることが案内されています(エンジェル税制の基本を参照)。

一方で、株主の数が一度に増えるため、株主総会の招集や情報提供の事務が増えます。後でVCから優先株式で調達する際には、経済産業省の「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」が示すように、みなし清算条項などを定める財産分配契約には原則として株主全員の参加が必要とされるため、株主が多いと手続きの負担が大きくなります。資本政策の中で、どの時期にどれだけの株式をクラウドファンディングで発行するかを検討しておきます(資本政策の基本を参照)。

ファンド型・貸付型

ファンド型は、投資家が特定の事業に出資し、その事業の売上や利益から分配を受ける方式です。第二種金融商品取引業者などが取り扱い、第二種金融商品取引業協会は、ファンド型の少額の募集(第二種少額電子募集取扱業務)について、発行額と投資家の払込額に上限が設けられていると説明しています。貸付型(ソーシャルレンディング)は、集めた資金を企業などに貸し付ける方式で、2024年11月1日施行の金融商品取引法の改正により、クラウドファンディングに適用される規制がソーシャルレンディングにも適用されることになりました。

起業家にとっては、特定の商品や店舗の事業に限った資金を集めたい場合にファンド型が候補になります。取り扱う業者ごとに対象事業や審査の基準が違うため、個別に確認します。

目的別の選び方

目的 候補になる種類
新商品の需要を確かめながら、製造資金を集めたい 購入型
社会的な活動への共感を資金にしたい 寄付型、購入型
株式を渡してでも、まとまった成長資金を集めたい 株式投資型
特定の事業の売上に連動する形で資金を集めたい ファンド型

どの種類でも、プラットフォームや業者の審査を通る必要があり、募集の準備、ページの作成、募集後の報告に手間がかかります。資金調達手段全体の中での位置づけはシード期の資金調達手段の種類と違いも参照してください。

制度は改定されます。申請・契約の前に公式情報と専門家(弁護士・税理士など)に確認してください。

参考資料

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