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新規事業のコンテンツマーケティング:テーマの選び方とステマ規制の注意点

新規事業のコンテンツマーケティングは、狙う顧客が課題に気づいてから製品を選ぶまでの各段階で抱く疑問に答える記事や資料を、少数のテーマに絞って作り続けることが基本です。広告のように出した瞬間に効くものではないため、早めに始めて蓄積させる一方で、表示に関する法令(特に2023年10月から景品表示法の規制対象になったステルスマーケティング)に反しない作り方を最初から決めておく必要があります。

新規事業でコンテンツが役に立つ理由

新規事業の製品は、市場でまだ知られていません。顧客は製品名で検索することはなく、自分の課題や、その課題の解決方法を調べています。その調べものの場面で役に立つ情報を提供できれば、製品を知らない顧客との接点が生まれます。

また、新しい種類の製品は、「なぜ今の方法ではだめなのか」「導入すると何が変わるのか」を顧客に理解してもらう必要があります。営業担当者が毎回口頭で説明していた内容を記事や資料にしておけば、商談の前に顧客の理解が進み、営業の負担も軽くなります。

一方で、コンテンツは成果が出るまでに時間がかかり、作り続ける手間もかかります。PMFの前、狙う顧客層がまだ定まっていない段階で大量に作ると、的外れな内容が積み上がることになります。コンテンツに本格的に投資するのは、狙う顧客層と、その顧客が製品を選ぶ理由が見えてきてからが適しています。その見極めにはPMF(プロダクトマーケットフィット)の判断の仕方が参考になります。

テーマの選び方

顧客の検討段階に沿って考える

顧客が製品を導入するまでの段階ごとに、どんな疑問を持つかを書き出します。

検討段階 顧客の疑問の例 コンテンツの例
課題に気づく この困りごとはよくあることか。放っておくとどうなるか 課題の解説、原因の整理
解決方法を探す どんな解決方法があるか。それぞれの長所と短所は 解決方法の比較、手順の解説
製品を比べる どの製品を選ぶべきか。何を基準に比べればよいか 選び方の基準、導入事例
導入を決める 社内をどう説得するか。導入に何が必要か 費用対効果の考え方、導入手順、社内説明用の資料

新規事業の初期は、「課題に気づく」「解決方法を探す」段階のコンテンツが特に重要です。顧客がまだ課題を言葉にできていない場合、その課題に名前をつけ、構造を説明するコンテンツが、製品を知ってもらう入口になります。

顧客の言葉を使う

テーマや見出しには、顧客が実際に使う言葉を使います。社内で使っている製品のカテゴリー名や専門用語は、顧客が検索する言葉と違うことがよくあります。顧客ヒアリングや商談の記録、問い合わせの文面から、顧客が課題をどう表現しているかを拾います。ヒアリングで顧客の言葉を引き出す聞き方は顧客ヒアリングの質問項目と聞き方を参考にしてください。

自社にしか書けないことを軸にする

一般的な解説記事は、すでに多くの競合や専門メディアが書いています。新規事業が差をつけられるのは、その課題に向き合ってきた自分たちならではの知見です。顧客ヒアリングで見えた課題の実態、導入支援の中で分かったつまずきやすい点など、実際の経験に基づく内容を軸にします(顧客の情報を使う場合は、顧客の了承を得て、特定されないように配慮します)。

形式の選び方

コンテンツの形式は、顧客がどの段階で、どんな状況で情報に触れるかで選びます。

  • 記事(ウェブサイト、ブログ):検索からの接点を作りやすい。蓄積すると、長く読まれ続ける
  • ホワイトペーパー・資料:詳しい解説や調査結果をまとめ、ダウンロードの際に連絡先を登録してもらう。法人向けで見込み客を集める手段として使われる
  • 導入事例:製品を比べる段階の顧客にとって最も参考になる。同じ業種・規模の事例が特に効く
  • セミナー・ウェビナー:顧客と直接やりとりでき、質問から新しいテーマも見つかる
  • メールマガジン:一度接点を持った顧客との関係を保つ。広告宣伝メールにあたる場合は特定電子メール法の同意と表示のルールに従う
  • SNS・動画:認知を広げる。短い形式のため、詳しい内容は記事や資料に誘導する

最初からすべてを揃える必要はありません。狙う顧客が最も情報を集めている場所で、1〜2の形式から始めます。

作り続けるための体制

コンテンツマーケティングで最も難しいのは、作り続けることです。

  • 発行の頻度を決める:無理のない頻度を決め、守ることを優先する
  • テーマの一覧を作っておく:検討段階ごとのテーマを事前に並べておくと、毎回テーマ探しで止まらない
  • 社内の知見を引き出す:営業担当やカスタマーサクセスの担当者が顧客から受けた質問は、そのままテーマになる。定期的に集める仕組みを作る
  • 確認の手順を決める:数字や事実の確認、法令上の確認、顧客情報の扱いの確認を、公開前に誰が行うかを決める
  • 外部に依頼する場合:制作会社やライターに依頼する場合も、テーマの選定と事実の確認は社内で責任を持つ

効果の測り方

コンテンツの効果は、閲覧数だけでは測れません。閲覧数が多くても、狙う顧客に読まれていなければ事業には結びつきません。次のような段階に分けて見ます。

  • 届いているか:閲覧数、検索からの流入、狙う顧客層からの閲覧か
  • 関心を持たれているか:読了の状況、ほかのページへの移動、資料のダウンロード
  • 行動につながっているか:問い合わせ、試用の申込み、商談への進展
  • 商談で使われているか:営業担当が商談でその資料を使っているか、顧客が商談前に読んでいたか

法人向けの製品では、コンテンツを読んでから契約まで時間がかかるため、商談の際に「何を見て問い合わせたか」を聞いて記録しておくと、効果の把握に役立ちます。

ステルスマーケティング規制に注意する

2023年10月から景品表示法の規制対象に

消費者庁は、景品表示法第5条第3号に基づき、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を指定する告示(令和5年内閣府告示第19号)を定め、2023年(令和5年)10月1日から施行しています。告示では、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」が不当表示とされています。いわゆるステルスマーケティングです。

消費者庁によると、規制の対象は商品やサービスを供給する事業者(広告主)で、広告主から依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は規制の対象ではありません。つまり、第三者に依頼した投稿が問題になった場合、責任を問われるのは依頼した事業者です。

「事業者の表示」にあたる場合

消費者庁の運用基準では、事業者が表示内容の決定に関与した場合は、第三者の名前で出された表示でも事業者の表示にあたるとされています。明示的に指示していなくても、事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性がある場合も含まれます。コンテンツマーケティングで特に注意したいのは次の場面です。

  • インフルエンサーや専門家に記事・投稿を依頼する:消費者庁のQ&Aでは、特定のインフルエンサーを選んで商品を無償で提供し投稿を依頼する場合、やりとりの内容、無償提供の内容や目的、取引関係の有無などの事情によっては、事業者の表示にあたると判断される場合があるとされています。内容を指示したり報酬を払ったりして依頼する場合は、事業者の表示として扱う前提で進めるのが安全です
  • 従業員の投稿:運用基準では、従業員の地位、立場、権限、担当業務、表示の目的などの実態を踏まえ、事業者が表示内容の決定に関与したかを総合的に考慮して判断するとされています。事業者の表示にあたる例として、販売を促進することが必要とされる地位や立場にある人(販売や開発に関わる役員、管理職、担当チームの一員など)が、販売促進のための投稿をする場合が挙げられています。Q&Aでは、「〇〇社の社員です」と所属を書くだけでは、事業者の表示であることが明瞭とは必ずしもいえないとされています
  • お客様の声の掲載:Q&Aでは、アンケートの回答から無作為に選んで引用する場合は事業者の表示にあたらないと考えられる一方、好意的な評価だけを選んで引用する場合や、「良い点」の部分だけを引用する場合は事業者の表示にあたると考えられるとされています
  • アフィリエイト:Q&Aでは、サイトの冒頭に「このサイトはアフィリエイト広告を利用しています」などと書いてあっても、文字の大きさや色なども踏まえて、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっている必要があるとされています

表示の仕方

事業者の表示であることは、一般消費者にとって明瞭に分かるようにする必要があります。運用基準では、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章で示す方法が挙げられています。一方、事業者の表示である旨を周囲の文字より小さく表示したり、大量のハッシュタグの中に埋もれさせたり、認識できないほど短い時間だけ示したりする方法は、明瞭とはいえないとされています。

なお、運用基準では、第三者と事業者との間で表示内容についての情報のやりとりが一切ない、第三者の自主的な意思による投稿は、通常、事業者の表示にはあたらないとされています。

ステマ告示は一般消費者に向けた表示を対象とする景品表示法に基づくものです。法人向けの製品であっても、個人の消費者も購入できる場合などは対象になり得るため、判断に迷う場合は専門家に確認してください。

「No.1」や「日本初」の表示

記事や資料で「満足度No.1」「業界初」などの表現を使う場合も注意が必要です。消費者庁が2024年(令和6年)9月に公表した「No.1表示に関する実態調査報告書」では、No.1表示が合理的な根拠に基づくといえるためには、比較対象の商品・サービスが適切に選定されていること、調査対象者が適切に選定されていること、調査が公平な方法で実施されていること、表示内容と調査結果が適切に対応していることが必要とされています。

大企業の新規事業での注意点

  • 会社のブランドの使い方を決める:大企業の名前を出すと信頼は得やすい一方、広報部門の確認手続きで発行が遅れがちです。新規事業のサイトや発信について、確認の範囲と期間を広報部門と事前に取り決めておきます。
  • 既存事業のメディアに埋もれさせない:会社の公式サイトの一角に置くと、狙う顧客に見つけてもらいにくいことがあります。新規事業の顧客に向けた独立した発信の場を検討します。
  • グループ会社・取引先の投稿にも注意:グループ会社の社員や取引先に投稿を頼むと、ステマ告示の観点で事業者の表示にあたる可能性があります。依頼する場合は、事業者の表示であることを明示してもらいます。

起業家・スタートアップでの注意点

  • 創業者の発信を活かす:創業者がなぜこの事業に取り組むのか、どんな課題を見てきたのかという発信は、スタートアップならではのコンテンツになります。ただし、自社製品を勧める投稿は事業者の表示にあたるため、読み手に宣伝と分からない形にしないようにします。
  • 少人数で回せる量にする:限られた人数で多くの形式に手を広げず、狙う顧客に最も届く形式に集中します。
  • 知人や投資家の「応援投稿」に注意:好意で紹介してもらう場合も、内容を指示したり、見返りを渡したりすると事業者の表示にあたる可能性があります。

まとめ

  • コンテンツへの本格的な投資は、狙う顧客層と選ばれる理由が見えてから
  • 顧客の検討段階ごとの疑問を、顧客の言葉でテーマにする
  • 自社の経験に基づく、自社にしか書けない内容を軸にする
  • 閲覧数だけでなく、問い合わせや商談への貢献で効果を測る
  • 第三者への依頼、従業員の投稿、口コミの引用は、ステマ告示に照らして「広告」等を明瞭に表示する
  • No.1表示は、比較対象・調査対象者・調査方法・表示との対応の4点を確認する

制度は改定されます。広告や表示の運用を決める前に、公式情報と弁護士などの専門家に確認してください。

参考資料

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