アイデア検証 起業家向け

ランディングページで需要を確かめるスモークテストの進め方

スモークテストは、製品を作る前にランディングページ(LP)で「こんなものを提供します」と告知し、事前登録や予約といった実際の行動がどれだけ起きるかで需要を確かめる方法です。求める行動の重さ、集客の経路、判断基準を先に決めて小さく回すこと、そして予約や代金の受け取りに進む場合は特定商取引法などのルールを守ることが要点です。

アイデア検証全体の中での位置づけは新規事業のアイデア検証でやることと進め方で説明しています。この記事では、LPを使った検証の具体的な進め方に絞ります。

スモークテストで確かめられること

分かること

  • 誰が、どの訴求の言葉に反応するか
  • どの集客経路から、関心の強い人が来るか
  • 登録や予約という行動を取るほどの関心があるか
  • 想定した価格を見ても、申し込む人がいるか

分からないこと

  • 実際に使い続けてもらえるか(継続は製品を提供してみないと分からない)
  • 解決策が本当に課題を解決できるか
  • 大きな規模で同じ反応が得られるか

LPへの登録は、あくまで「関心」の証拠です。登録した人に話を聞いたり、有料の試験提供に進んだりして、より強い証拠に変えていく前提で使います。

求める行動を選ぶ

LPで訪問者に求める行動(CTA)は、重いほど強い需要の証拠になりますが、反応の数は減り、守るべきルールも増えます。

求める行動 需要の証拠としての強さ 主な注意点
資料請求・メールアドレスの登録 弱い 個人情報の利用目的の明示、広告メールを送る場合の同意
無料の事前予約(支払いなし) やや強い 提供時期や条件をはっきり書く
予約注文(決済あり、または予約金) 強い 通信販売としての表示、前払いの場合の通知など
有料の試験提供の申込み(法人向け) 強い 契約条件の書面化

最初はメールアドレスの登録で訴求の言葉や顧客層を比べ、反応のよい組み合わせが見えたら予約や有料の申込みに進む、という段階的な進め方が現実的です。

ページの構成

LPは短くてかまいません。次の要素を上から並べます。

  1. 見出し:誰の、どんな課題を、どう良くするか。価値提案を一文で書きます。
  2. 課題の描写:対象の顧客が「自分のことだ」と感じる具体的な場面
  3. 解決の方法:どう解決するかの説明。画面のイメージや利用の流れ
  4. 価格:価格も検証したい場合は明記します
  5. 提供の状況と時期:開発中であること、提供開始の予定時期や、未定であること
  6. 行動の呼びかけ:登録、予約などのボタン
  7. よくある質問
  8. 運営者の情報:事業者名、連絡先、個人情報の取扱い

5の「提供の状況」は、訪問者を誤解させないために重要です。「今すぐ購入」のように、すぐに買えるかのような表現を、まだ提供できない製品に使うのは避けます。法令との関係は後で説明します。

集客と計測

集客の経路を決める

LPの結果は、どこから人を連れてくるかで大きく変わります。知人やSNSのフォロワーは好意的に登録しがちで、需要の証拠としては割り引いて見る必要があります。

  • 想定顧客が集まる場所(業界のコミュニティ、専門の媒体、検索広告)から集客する
  • 経路ごとに計測用のパラメータを付け、経路別に登録率を見る
  • 広告を使う場合は、予算の上限と期間を先に決める

計測する数字

  • 訪問数と登録数(または予約数)、その比率
  • 経路別、訴求の言葉別の比率
  • 登録後の行動(確認メールの開封、アンケートへの回答、面談への応諾)

訴求の言葉を比べる場合は、一度に変えるのは一つの要素(見出しだけ、価格だけ)にします。複数を同時に変えると、何が効いたのか分かりません。

判断基準を先に決める

「登録率が何%なら次に進む」という基準は、業種、価格、集客経路によって大きく変わるため、一般的な正解はありません。テストを始める前に、事業の収支から逆算して「この比率を下回ると広告で顧客を集める事業は成り立たない」という線を自分たちで引いておきます。基準を後から決めると、どんな結果でも成功に見えてしまいます。

登録した人に連絡する

スモークテストで最も価値があるのは、登録した人と直接話せることです。登録直後の確認メールで、短い面談やアンケートへの協力をお願いします。

  • なぜ登録したのか、今その課題をどう片付けているか
  • どの言葉に引かれたか
  • 提供されたら、いつ、いくらなら使い始めるか

登録者の多くが面談に応じない、話を聞くと課題が想定と違う、といった結果も重要な学びです。話の進め方は顧客ヒアリングの質問項目と聞き方を参照してください。

法令上の注意点

ここでは、消費者庁と総務省の公式情報で確認できた範囲の要点を挙げます。自社のLPが該当するかどうかは、取引の内容によって変わります。

事前登録と予約注文で、かかわる規制が変わる

消費者庁の特定商取引法ガイドでは、通信販売を、事業者がインターネット上のホームページなどで広告し、郵便や電話、インターネットなどで申込みを受けて行う取引と説明しています。メールアドレスの登録を受けるだけのLPと、予約注文や代金の支払いを受け付けるLPでは、この「申込みを受けて行う販売」にあたるかどうかが変わりうるため、予約や決済に進む段階で、通信販売の規制を前提にページを作り直します。

なお、同ガイドでは、営業のために、または営業として締結する取引などは特定商取引法の適用除外とされています。法人向けの取引であっても、実態によって判断が分かれることがあるため、個別に確認してください。

予約注文を受ける場合の広告の表示

同ガイドでは、通信販売の広告に表示する事項として、販売価格(送料を含む)、代金の支払時期と方法、商品の引渡時期(役務の提供時期)、申込みの期間に関する定めがあるときはその内容、申込みの撤回や解除に関する事項(返品特約を含む)、事業者の名称・住所・電話番号、販売数量の制限など特別な販売条件があるときはその内容などが挙げられています。予約販売では、特に引渡時期と、予約の期間や数量の条件を明確に書くことが重要です。

また、インターネットでの申込みを受ける場合は、最終確認画面に、分量、販売価格、支払時期と方法、引渡時期、申込み期間、申込みの撤回や解除に関する事項を表示することが定められ、申込みであることを誤認させるような表示や、これらの事項を誤認させるような表示が禁止されています。ネット販売の表示全般はネット販売を始めるときの特定商取引法の表示でも扱います。

代金を先に受け取る場合の通知

同ガイドでは、商品の引渡しの前に代金の全部または一部を受け取る「前払式」の通信販売で、代金を受け取った後、商品の引渡しに時間がかかるときは、申込みの承諾の有無、受け取った金額と年月日、商品とその数量、承諾する場合の引渡時期などを記載した書面を渡さなければならないと説明されています。ここでの「遅滞なく」送付する場合の目安は、取引の実態からみて1週間程度とされています。提供開始まで時間がかかる予約販売は、この通知が必要になるかを確認してください。

誇大な表示の禁止

特定商取引法は、通信販売の広告で、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良・有利であると誤認させる表示を禁止しています。開発前の製品について、完成していない機能や、確約できない性能を断定的に書かないようにします。

景品表示法:提供の準備がない製品の広告

景品表示法の告示「おとり広告に関する表示」では、取引の申出にかかる商品やサービスについて、取引を行うための準備がなされていない場合の表示などを不当表示として定めています。一般消費者向けに、実際には販売の準備がない製品を、すぐに購入できるかのように見せるLPは、この告示との関係を検討する必要があります。開発中であること、提供時期、予約の条件を明記し、判断に迷う場合は弁護士に確認してください。

また、「先着100名限定」「今だけ半額」のような条件を書く場合は、実際にそのとおりの条件にします。取引条件を実際より著しく有利だと誤認させる表示は、景品表示法の有利誤認表示にあたるおそれがあります。

登録者へのメールの送り方

登録者に案内メールを送る場合、特定電子メール法では、原則としてあらかじめ同意した人にだけ広告宣伝メールを送ることができるとされています(オプトイン方式)。総務省のパンフレットでは、同意を受けた記録の保存、送信者の氏名または名称や受信拒否の通知ができる旨の表示などが義務づけられていると説明されています。通信販売の電子メール広告にあたる場合は、特定商取引法でも、消費者の承諾なしの送信が原則禁止され、承諾の記録を最後に送信した日から3年間保存する必要があるとされています。

登録フォームには「提供開始のご案内や関連情報をメールでお送りします」のように、送るメールの内容を明記し、同意を得たうえで登録してもらうのが安全です。

個人情報の利用目的

メールアドレスや氏名などを集める場合、個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、利用目的をできる限り特定し、本人から直接書面等で取得する場合はあらかじめ利用目的を明示することなどが説明されています。登録フォームの近くに、利用目的と問い合わせ先を示します。

クラウドファンディングとの違い

購入型のクラウドファンディングも、製品を作る前に支援(実質的な予約)を募る点で、スモークテストに似ています。プラットフォームの集客力や決済の仕組みを使える反面、プラットフォームの規約や手数料があり、支援者への約束(リターンの提供)を守る責任が生じます。

よくある失敗

  • 登録数だけで需要があると判断する:登録は無料で手軽な行動です。登録者と話し、より重い行動に進むかを確かめます。
  • 知人の登録で数字を膨らませる:集客経路ごとに分けて見ないと、好意による登録と需要の区別がつきません。
  • 登録者に何も連絡しない:LPを閉じた後に放置すると、せっかくの見込み顧客との関係が途切れます。提供をやめる場合も、その旨を連絡します。
  • 提供できないものを売ってしまう:代金を受け取った後に提供できなくなれば、返金とともに信用を失います。代金を受け取るのは、提供の見通しが立ってからにします。

大企業の新規事業で行う場合

この記事は主に起業家向けですが、大企業の新規事業でも使える方法です。その場合、会社名を出すかどうかで反応が変わること、ブランドや広報、法務の承認が必要になることに注意します。会社名を伏せたテストを行う場合でも、予約や申込みを受ける段階では、特定商取引法で広告に表示すべき事項として事業者の名称などが挙げられています(一定の条件で表示を省略できる場合もあります)。どこまで伏せられるかは、法務部門と事前に確認してください。

まとめ

スモークテストは、LPで提供を告知し、登録や予約という行動で需要を確かめる方法です。求める行動を軽いものから段階的に重くし、集客経路と判断基準を先に決め、登録した人に話を聞いて証拠を強めます。予約や代金の受け取りに進む場合は、特定商取引法の広告表示、最終確認画面、前払式の通知、景品表示法、特定電子メール法、個人情報保護法のルールを確認してください。制度は改定されます。LPの公開や予約の受付の前に、公式情報と専門家(弁護士など)に確認してください。

参考資料

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